2022年12月8日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年10月3日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 毎年減り続けているとされるコメの需要。農林水産省の表現を借りると「主食用米の全国ベースの需要量は一貫して減少傾向にある。最近は人口減少等を背景に年10万トン程度に減少幅が拡大」ということになっている。

 需要が減っているので需給を均衡させ、価格を維持するために主食用米の生産を減らす政策が続けられている。いわゆる入口対策と称されるものだが、それに投じられる税金はなんと年間3500億円にもなる。

コロナ禍で需要が高まる冷凍米飯は、実は「主食用」コメではない(Fahroni/gettyimages)

 供給量を減らしてコメの価格を維持するためにこれだけの巨額な税金が投じられているのだが、不思議なことは農水省が言うコメの需要とは一般人の感覚からすると首をかしげてしまう事例が多い。例えば需要が増加している冷凍米飯や米粉は農水省の判断では「主食用」とは見做されない。この分野がいくら増えてもコメの需要増加とはならないのだ。

 なにをもって主食用の需要と見做すのか、その根拠となっている「需給調整要領」はこれまで全面改定が2回、部分改定が28回も行われている。要するにコメの需要とは農水省の恣意的な判断に任されているのだ。

 本来、どのような作物を作るかは生産者の自由意思に任されるべきものだが、巨額の助成金により生産者の自由意思がほぼ働かくなっている。コメ業界の現場を取材すると、「主食用」ではないものの需要が拡大されており、その可能性を見出して新たな商品開発を進める取り組みも多くあるのに、政策的な規制が産業として羽ばたく芽を摘んでしまっている。

高まる冷凍米飯、新たな技術開発も     

 まずはコロナ禍で需要が伸びた冷凍米飯の生産量について、冷凍食品協会が詳しいデータを公表している。それによると昨年1年間に生産された冷凍米飯の生産量は、前年に比べ1.1%増加して19万5718トンになっている。

 商品別内訳はチャーハンが10万667トン、ピラフ5万985トン、おにぎり2万7057トン、その他1万7039トン。冷凍食品全体の生産量は159万6213トン(前年比2.9%増)もあり、仕向け先は業務用と家庭用がちょうど半々の割合になっている。これまで業務用の割合が高かったが、コロナ禍による巣ごもり需要の追い風を受けて初めて家庭用が業務用を上回った。

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