お花畑の農業論にモノ申す

2022年3月10日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 パックご飯の大手メーカーであるテーブルマーク(東京都中央区)が1月27日、コメを配合したバイオプラスチックを外装フィルムの原料に使用すると発表した。外装フィルムに採用するのはパックご飯業界では初めて。コメを配合したバイオプラスチックは、レジ袋や赤ちゃん用のおもちゃ、ボールペンなどさまざまな用途に使われ始めており、需要減退に悩まされているコメ業界にとって新たなマーケットとして期待がかかる。

コメを配合したバイオプラスチックを使用した商品(筆者撮影、以下同)

 このコメを原料としたバイオプラスチックはバイオマスに関する技術を持つバイオマスレジン南魚沼(新潟県南魚沼市)が製造し、「ライスレジン」と名が付いている。パックご飯を製造する際、精米工程で発生する砕米や古米といった食用に適さないコメを新しい技術でアップサイクルしたもの。同社は「元来、地球上にある植物を原料にとするため、地上の二酸化炭素(CO2)の増減に影響を与えない『カーボンニュートラル』の性質を持っており、石油系プラスチックの使用量削減にもつながる」と説明している。

国が進める「環境配慮」の追い風

 外装フィルムの商品化は今年4月から販売する「新潟県産大粒ごはん3食」の一部原料にする。これによって石油系プラスチック使用量を変更前に比べ4.2%削減することが出来るという。

 企業にとって今や石油系プラスチックの使用を削減するとともにCO2発生を減らすことは大きな社会的責務になっている。さらに、国が2030年までにバイオプラスチックの使用量を約200万トンにするという大目標を掲げているだけにこうした動きは今後加速するものと予想される。

 こうした環境の中で登場したのがコメ原料のバイオプラスチックで、それを製造するバイオマスレジン南魚沼は「30年までに年間製造量を10万トンにする」という大きな目標を掲げているのだからコメ業界の救世主と言うべき存在だ。しかも同社は原料となるコメの栽培に乗り出しており、地元南魚沼に続き、福島県浪江町でもコメ作りに乗り出したのだから減反緩和策の一助にもなり得るという側面もある。

価格で見合わなかったコメによるバイオエタノール

 コメを食べる用途以外に使うという試みは以前からあった。2000年代初めには米国のトウモロコシバイオエタノールやブラジルのサトウキビバイオエタノールに倣ってコメや稲を原料にしたバイオエタノール事業が持て囃された。しかし、その時に国内で名乗りを上げた企業は全て撤退した。

 その最大の原因は、コメはバイオエタノールの原料としてはトウモロコシやサトウキビに比べはるかに高く、採算が合わなかったためである。唯一例外的に事業を拡大しているのがコメ原料のバイオエタノールを化粧品の原料としているものだけである。これについては改めて触れることにして、今回は今、注目されつつあるコメ原料のバイオプラスチックについて触れてみたい。

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