2022年8月11日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年8月4日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 「今まで一度も取引がなかった複数の国から引き合いが来ているんですよ」。日本米輸出に取り組む生産者組織が立ち上げた会社の担当役員がやや興奮気味に語る。

(nakornkhai/gettyimages)

 コロナ禍やウクライナ紛争による世界的な穀物相場高騰に加え、米カリフォルニア州の旱魃による生産量減少、さらには急激に進む円安もあって日本米輸出に追い風が吹いている。ただし、日本のコメ産業には制度上、第三者には理解しがたい足かせがはめられており、輸出業者の自由な商活動に支障を来す問題が横たわっている。

国はコメの輸出に手厚い支援

 国は、農林水産物・食品輸出拡大実行戦略で2025年に2兆円、30年に5兆円という高い目標を掲げている。その具体的な施策の輸出重点品目28品目の中に「コメ・コメ加工食品」が入っており、25年の目標額として125億円、30年には600億円を置く。

 これまでの輸出実績は、17年の35億円から右肩上がりに伸びており、21年には66億円まで増加したが、まだ目標とする額の半分に留まっている。国は、輸出を加速するためにさまざまな支援策を講じており、予算額ベースで輸出額を上回るほどの手厚い支援を施している。        

 国が日本米輸出拡大のために講じている支援策の中で最も大きなものは「新市場開拓用米」というくくりで輸出用米を位置付けていることである。

 これは何かというと、農林水産省が新市場開拓用米と認定すればコメを作っても転作したとみなされ、減反政策による生産調整から外れ、その分面積に合わせた助成金が支払われるという不思議な制度である。輸出すれば国内の主食用米の需給に影響を与えないという判断で、加工用米と同じ10アール当たり2万円の助成金が得られる。

 さらに補正予算で水田リノベーション対策が盛り込まれ、低コスト生産技術を導入すれば2万円が加算される。仮に10アール当たり10俵穫れたとすると、1俵当たり2000円、水田リノベーション対策に採択されると4000円の助成金が得られる。産地側にすれば一般米を輸出するより、新市場開拓米として農水省の認可を受けて助成金を得られる様にするのは当然で、助成金を得た上での輸出が常態化している。

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