2022年9月26日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年8月4日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

求められる「輸出用米専用市場」の整備

 こうした足かせを取り除き自由に輸出に取組み、かつ国や自治体の支援を受けられるようにするための一つのプランとして「輸出用米専用の取引市場」を開設することが望まれる。

 具体的には、輸出用米を販売したい農協や集荷業者、生産者、輸出用米を買って海外に輸出したい卸や商社、場合によっては海外のバイヤーが参加出来る取引市場を作って、そこで現物だけではなく、先渡しで取引できるようにする。今年の例では23年産新米が出回る10月から来年10月まで1年先まで取引が出来る様にする。

 市場はオープンにして売り手は自分が売りたいコメをロットと産地銘柄等級・品位等を明示して受渡可能な時期を示す。同様に買い手も自社が必要とするコメをロット、産地銘柄・品位等を明示、購入限月を示して取引市場で買い意向を示す。有機米等こだわったコメを作っている生産者らも取引に参加出来るようにする。

 このように売り手買い手双方が市場に自らの売り、買いを発注することによって市場運営社が成約に結び付ける。他の産業では当たり前の市場に見えるだろうが、コメ産業ではできていない。

 この市場で成約した輸出用米を新市場開拓米として農水省が事後認可すれば、助成措置も受けられる。こうすることによって生産者にとって煩雑な輸出用米認可の手続きが省略でき、買い手にとっても輸出用米の過不足を簡単に解消できるようになる。

 また、この市場でA生産者の輸出用米をB卸が購入を決め成約した後、何らかの事情で輸出出来なくなった場合、その成約したものをCという卸に転売できるようにすれば市場の流動性が増す。転売については農水省が輸出制度の要領を柔軟に運用することで解決できる。

 当然、国内の需給状況等によってコメの価格は変動するが、その際のリスクヘッジ手段として先物市場を活用できるようにする。

 堂島商品取引所は農水省の判断でコメの本上場が非認可になってしまったが、輸出用米については来年11月まで新潟コシヒカリが売買できるようになっており、これを新潟コシヒカリに限らず日本で生産されるどのような産地銘柄であっても売買出来るように商品設計を変えれば良い。

 こうした輸出用米の「現物+先渡し市場」と「先物清算市場」の2つがあれば誰でも市場で輸出用米の売り買いが可能になり、飛躍的に日本米の輸出量が増加することになるだろう。そうすれば、今まさに起きている日本米輸出の追い風に乗ることもできる。

  
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