2022年6月27日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年5月31日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 新型コロナウイルス禍の物流混乱に加え、ウクライナ紛争により世界的に穀物の価格が高騰している。そうした中にあっても国内のコメのだけが安い。コメの納入業者は外食や中食などのユーザーから「安いのはコメだけだね」と言われるほどの状況になっている。

日本には、一般消費者がコメの価格の決まり方を見られる公の市場がない(sakhorn38/gettyimages)

 コメの価格が安い状況がいつまでも続くとは限らない。そうした見通しを難しくしている要因が一般の消費者にはコメの価格がどうやって決まっているのかあまり知られていないことだ。

 コメが日本人の主食と呼ばれるような存在であれば、その価格がどこでどのように決まっているのか大方の国民が分かるような「市場」があるのが自然だが、コメの世界にはそうした公の市場はない。

先物市場を閉鎖に追い込んで現物市場を作る農水省

 市場が無いというのは正確ではなく、誰でも毎日コメの価格が見られる市場はある。それは大阪堂島商品取引所が行っているコメの先物市場で、ここでは新潟コシヒカリ、秋田あきたこまち、宮城ひとめぼれ、それと日本国内で生産されるコメで検査を受けたものならどのような銘柄であっても平均的なコメの価格がわかった。

 ところが、この市場はあくまで試験上場で、農林水産省は大阪堂島商品取引所が申請したコメの本上場を認めなかったことから、今月末には先物市場での売買が行われなくなる。コメの先物市場は1年先まで売買が行われるため、市場が閉鎖されなければ来年6月までのコメの価格がわかったのだが、今月末でコメの取引が行われなくなるため、先行きの価格が分からなくなる。

 このことはコメの生産者にとっても大変なデメリットである。例えば、コメ生産者は、コメ先物市場があれば今年10月に収穫される2022(令和4)年産コシヒカリの価格を先物価格として知ることができ、収穫前に所得を確定することもできたのだが、そうした機会を失ってしまう。収益の確保ができなくなるのだ。

 農水省にはそうした先物市場のメリットについてコメ生産者から意見書が提出されていたにも関わらず、本上場の非認可という判断を下したのである。その一方で、今度は与党からの要請もあって需要と供給に基づいて価格が決まる現物市場が必要だという事で、「現物市場検討会」を急ごしらえで作って3月に制度設計を取りまとめた。

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