2022年9月26日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年8月4日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

認定された量と輸出実績が大きく異なる謎

 その数量がどうなっているのかを17年産から21年産までの推移を示すと下表のようになる。

 新市場開拓用米として国から認定された数量は18年産から急激に伸びており、21年産は3万6869トンに達している。しかしながら、輸出実績と比較すると、認定数量の方がはるかに多いことが分かる。これは新市場開拓用米として輸出用米の認可を得たものの、実際には輸出されていないことを意味している。

 このように認定と輸出実績に大きな差異が生じてしまう要因は、新市場開拓用米の認定制度にある。国は、次年度産の輸出用米を新市場開拓用米として認可を得るには6月末までに計画書を提出しなければならないこととしている。つまり23年産のコメを輸出用米にしたいという場合は、計画書を22年6月末までに提出する必要がある。

 輸出取引はコメが生産されてから行われるため、その時々の需要によって取引量が減少してしまったり、取引そのものがキャンセルとなったりしてしまうことがある。実際、輸出に力を入れている大手卸の一つは、21年産で前年比140%という高い目標を掲げて取り組んだのだが、コロナ禍による物流の混乱や海外市場への開拓が出来なかったこともあり、計画に対して3割減と言う厳しい状況に追い込まれている。

 また、輸出用米を新市場開拓米として認可を受けるには、農水省が定めた「需要に応じた米の生産・販売に関する要領」に従わなくてはならない。05年に制定されたこの要領は、これまでに全面改正が2回、一部改正は実に28回にも及ぶややこしい要領で、輸出用の認可を得たものが輸出国先の事情で輸出が出来なくなった場合、その分を国内で販売することが出来ない。産地や輸出業者は輸出が出来るようになるまで在庫を抱える羽目になる。

 これにより、在庫が重荷となった産地や輸出業者は次年産米の取組み計画を減らさざるを得なくなってしまう。輸出業者らは農水省に対して輸出用米の認可を事前審査ではなく事後審査にして欲しいと要請してきたが、未だに認められていない。

制度は拡大する需要獲得をも阻む

 国による新市場開拓用米の認可は、輸出を拡大しようとする際にも足かせになっている。

 冒頭に海外から新規に日本米の引き合いが来ている生産者組織の事例を紹介したが、この生産者組織は新規の引き合いに対して応じられない状況になっている。なぜなら、今年産米の輸出用米を新市場開拓米として追加申請することが出来ないからである。

 新規の輸出に応じようとするなら、一般米を手当てしなければならず、そうすると助成金が得られない。少なくとも1俵2000円のコストアップになる。「少なくとも」と記したのは、輸出用米については県や市町村段階で独自に助成しているところもあり、1俵当たり2000円から4000円、中には6500円もの助成金を支給するところさえある。こうした助成措置を受けられるか否かで日本米の輸出原価が大幅に違って来るので海外で市場を開拓する際には必要不可欠な助成金になっている。

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