2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月8日

 ガス市場についても、米国から教訓を得られる。監査機関がパイプラインのようなインフラへのオープンなアクセスを要求し、市場参加者が十分な情報を持てるよう透明性の基準を実施するので、米国の市場は、効率的に混乱に反応できる。欧州もそうした方向に進んではいるが、まだ改善の余地がある。

 これらのステップに焦点を当てることは、米国産天然ガスの輸出について語るよりも、魅力的でないかもしれない。しかし、欧州のエネルギー安全保障を改善するための最大の機会は、米国のガスを売ることではなく、米国モデルを取り入れさせることである、と論じています。

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 クリミア事件を契機に、欧州のロシア産天然ガスへの依存を減らすために、米国の原油備蓄放出、米国のシェールガスの輸出規制の緩和などが提案されています。それに対して、欧州のロシア・ガス依存を減らすためには、欧州自身がシェールガス生産を推進すべきである、と論じている論説です。

 キャメロン英首相は、3月25日にハーグでの記者会見で、あらゆる種類のエネルギー源を利用して、欧州のエネルギー独立を政策課題の第一に位置づけるべきである、と述べ、シェールガス開発推進も視野に入れることを示唆しています。レヴィは、欧州でシェールガスの開発が阻害されている要因として税制を挙げていますが、今年1月にキャメロン首相は、シェールガス開発プロジェクトから徴収している事業税につき、プロジェクトが行われている自治体の取り分を、従来の50%から100%に引き上げる優遇策を発表しています。

 米国務省は、2011年にエネルギー資源局を設置し、シェールブームを地政学的ツールとして利用するための努力を続けていますが、その一環として、米国のエネルギー企業と欧州各国が共同でシェールガスを開発することを奨励しており、ポーランドでは、水圧破砕法による掘削が始まっています。

 もちろん、米国のシェールガス輸出規制の緩和が即効薬でない以上に、欧州独自のシェールガス開発も即効薬ではありません。しかし、英国やポーランドの例は、欧州での可能性を示唆しているように思います。いずれにしても、長期的な問題と考えるべきであり、日本としては、長期的には、ガス価、油価の低落を期待してよいのでしょう。

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