2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年5月7日

 日本ではあらゆることがいい加減に決まっているが(私には、対米開戦もいい加減に決めたとしか思えない)、法人税減税を巡る議論もそうである。もちろん、賛成派も、OECDの報告以外にあまり証拠がないようなのだが(アジア諸国で法人税減税の結果、法人税税収がどうなったかくらいの証拠は集めても良いのではないか)、反対派の代替財源5兆円説もひどいと思う。

設備投資と税引き後利益の関係

 さらにもう少し考えてみたい。他人に証拠を集めていないと言ったのだから、自分でも少しは証拠を集めるべきである。そこで、法人税減税賛成派の立場から、法人税減税がどれだけ民間設備投資を拡大させるかを考えてみたい。

 図2は、民間設備投資と税引き後の利益を示したものである。両者は同じように動いており、投資を利益で説明する関数を推計すると、税引き後利益が1%上昇すると投資が0.45%増加するという関係がある。法人税が10%引き下げられるということは、税引き後の利益が15.4%[(1-0.25)/(1-0.35)]増加するということである。したがって、法人税が10%引き下げられれば、投資は6.9%(0.45×15.4)増加する。現在65兆円程度の設備投資が4.5兆円増加するということである。設備投資が4.5兆円も増加したら、景気も良くなって1兆や2兆の税収は増えるように思える。

 経済産業省も、アンケート調査により、法人税を10%下げれば、GDPが少なくとも7兆円増えるという分析を公表している(日本経済新聞2014年4月23日朝刊)。

 自然増収と公共事業の使い残しで法人税減税は可能である。心配なら、1年に5%ずつ、2回にわたって減税すれば良いのではないか。ただし、そうすると法人税が25%になる2年後に利益を集中させようとして来年の利益が上がらず、来年の自然増収も増えない可能性がある。(本稿の分析においては丸三証券の岡崎圭一氏の協力を得た。)


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