「もう、中国に帰ろうと思っています」
日本名を名乗りながら日本語はたどたどしく、中国語を話すとにわかに水を得た魚のように元気になる人々。接点があってもその輪郭を太くしようとは思わなかった。そんな彼らと、私が初めてきちんと向き合ったのは2000年のことだ。
週刊誌の企画で中国人犯罪を取り上げ、その連載第2回のテーマを、残留孤児になりすまして密入国する犯罪組織としたことがきっかけだった。
未整理の古い名刺の束をひっくり返し、手帳の住所録を丁寧にめくり返し、手当たり次第に残留孤児とのルートをたどって3人の女性とつながった。ざっと10年のブランクを経た再会だった。みな快く取材に応じてくれ、楽しい現場だったが、別れ際になぜか2人が同じことをつぶやいたのだ。
「もう、中国に帰ろうと思っています」
※こちらの記事の全文は「終わらなかった戦争 サハリン、日ソ戦争が 戦後の日本に残したこと 戦後80年特別企画・後編」で見ることができます。
