2025年7月10日(木)

終わらない戦争・前編沖縄

2025年6月26日

現代の沖縄を知るには歴史を知ることが欠かせない。学校の授業で学べなかったことを、今こそ把握しておきたい。「Wedge」2025年7月号に掲載の特集「終わらない戦争 沖縄が問うこの国のかたち戦後80年特別企画・前編」の内容を一部、限定公開いたします。
2023年7月に李強首相(中央右)と会談した河野洋平元衆議院議長(中央左)と玉城デニー沖縄県知事(左)(REUTERS/AFLO)

 中国史が専門の早稲田大学教授・岡本隆司氏と現代中国が専門のジャーナリスト・富坂聰氏に琉球王国の時代から日中関係の変容、これからの中国との向き合い方などについて語り合ってもらった。アカデミズムとジャーナリズムを融合した視点から「沖縄問題」を考える。

編集部(以下、─)「沖縄問題」を考えるにあたって、なぜ、中国との関係性を振り返るべきなのか。

岡本 まず、我々が認識すべきこととして、沖縄はかつて琉球王国であり、中国とは約500年以上に及ぶ関係があったということ。一方、日本との関係は、江戸時代初期から薩摩藩に支配される時期があったが、後述するように1879(明治12)年、沖縄県を設置した「琉球処分」以降、わずか150年程度である。

 歴史を生業とする私にとって、沖縄がかつて中国と長く深い関係があった事実を知らないまま、沖縄問題が語られることに違和感を覚える。沖縄問題は、中国の存在抜きにして語ることはできないと思う。

岡本隆司(Takashi Okamoto)早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授 1965年生まれ。京都大学大学院文学研究科東洋史学後期博士課程満期退学。京都府立大学文学部教授などを経て、2024年より現職。専攻は東洋史・近代アジア史。近著に『倭寇とは何か 中華を揺さぶる「海賊」の正体』(新潮選書)。25年に紫綬褒章を受章。

富坂 同感だ。私が専門とする現代中国の視点に引き付けて言うと、朝鮮戦争がそうであったように半島は戦争の火種になりやすい地域であり、大国の間で揺れ動くのは島国である場合が多い。沖縄、あるいは台湾はその象徴ではないかと思う。安全保障の観点から、沖縄が日本にとっての要衝であることは間違いないが、米中の動きが激しくなればなるほど、木の葉のように揺れ動く存在として見えてくる。

富坂 聰(Satoshi Tomisaka)ジャーナリスト 北京大学中文系留学後、週刊誌記者などを経てフリージャーナリストに。1994年『「龍の伝人」たち』(小学館)で、21世紀国際ノンフィクション大賞(現・小学館ノンフィクション大賞)優秀賞を受賞。豊富な人脈を生かした中国レポートを続ける。小誌で「日本病にもがく中国」を連載中。

 つい先日、ある中国人から「沖縄の人はよく我慢していると思う」と言われた。中国には沖縄の人に好感を持っている人が少なくない。逆に沖縄の人もそうかもしれない。

 印象的だったのは、2012年に沖縄県で開催された日中ジャーナリスト交流会議で、県知事を含めて大勢の県関係者が出席し、中国人を歓待していたということだ。その厚遇ぶりは他の都道府県で開催された時とは、比較にならないほどだった。


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