2025年6月22日(日)

21世紀の安全保障論

2025年6月9日

 沖縄・尖閣諸島で中国海警局のヘリが日本の領空を侵犯してから1カ月が経過する。この間、日本政府は抗議だけはしたものの、深刻な危機との認識を欠いていると思わざるを得ない対応を続けている。このままでは本当に領土を失いかねない。

尖閣諸島最大の魚釣島(2009年、筆者撮影)

 本稿では今回の事態の異常さを指摘するとともに、領土と主権を奪い取るために、硬軟織り交ぜた揺さぶりを仕掛けてきた中国に対し、いま何をすべきかを指摘したい。

〝異常な〟領空侵犯

 新聞各紙等の報道によると、5月3日午後0時18分ごろ、80歳代の日本人男性が操縦する小型民間機が尖閣諸島・魚釣島周辺の領空に近づくと同時に、同諸島の接続水域を航行していた中国海警局の「海警2303」が領海に侵入、直後の0時21分、海警2303は搭載ヘリを発進させ、日本の領空を侵犯した。

 警戒監視中の海上保安庁の巡視船から「危険が生じる恐れがある」などと連絡を受けた民間機は直ちに領空から出たが、ヘリは海保の警告を無視して領空侵犯を続け、15分後の0時36分、海警2303に戻ったという。

 尖閣諸島周辺で中国機が領空侵犯したのは3回目で、最初は2012年、国家海洋局(現在の海警局)のプロペラ機で、当時は政府が同諸島を国有地化した直後であり、反発した中国の威嚇とみられていた。2回目は17年で、領海侵入した海警船が小型無人機を発進させたケースがあるが、今回の侵犯が過去2回のケースと大きく異なるのは、侵犯直後に海警局が「日本の民間機が領空を侵犯したのでヘリを発艦させて警告、追い払った」との報道官談話を発表、中国外務省も「中国の領空に不法侵入した」と抗議したことだ。

 なぜなら、中国は日本の民間機が同諸島の領空周辺を飛行することを事前に察知し、民間機が領空に入った時刻に合わせて領海侵入し、領空を侵犯した直後に中国政府が相次いでメッセージを発信するという計画的な行動だったからだ。

 今回の事態が深刻なのは、一方的な中国の管轄権行使が「領海」にとどまらず、「領空」にまで拡大し、しかも用意周到にその実績づくりに踏み出したことだ。


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