中国で7月15日から、インターネット上での身分が証明できる「国家ネットワーク身分認証公共サービス」が正式に始まった。中国共産党の公式機関紙の一つである「光明日報」が運営するニュースメディアGMW.cn(光明网、Guangming Online)では「ネットショピングで実名情報を使う必要があるのに、個人情報を漏らしたくない、そんな悩みを抱えていませんか? 先日、公安部、中国サイバースペース管理局、民政部、文化観光部、国家衛生健康委員会、国家ラジオテレビ総局など6つの部門が共同で『国家ネットワーク身分認証公共サービス管理弁法』を発表し、昨日(7月15日)から施行されました」と報じている。
中国共産党系の機関紙だけあって、インターネット身分証が身元証明と個人情報漏洩防止につながる手段であると強調して、インストールの方法について詳細に解説している。
中国政府すなわち中国共産党が、インターネット身分証を言論統制に用いるのは明らかだ。
完成形としてのインターネット身分証
中国政府は、過去よりインターネット上の匿名性を排除するために着々と統制制度を積み上げてきた。2010年9月1日に始まった「携帯電話実名登録制度」がその起源だ。
当初8億人以上とされる携帯ユーザーのうち3億2000万人が未登録だったが、13年に登録が義務化されるとともに、16年には未登録ユーザーへの通信サービスが強制停止されることになった。24年時点ではSIMカードの92%以上が身分証(居民身分証)の18桁の身分証番号と結びづけられている。
外国人も例外ではなく、パスポートや外国人永住証(外国人永久居留身分証)の番号は携帯電話と紐ついている。
中国の場合、携帯電話の申し込みは、中国移動(China Mobile)、中国聯通(China Unicom)、中国電信(China Telecom)、中国広電(China Broadnet)でしかできず、身分証や顔認証が必要とされる。空港やホテルで販売されるプリペイドSIMもパスポートを提示して、実名登録しないと購入できないのだ。
実名登録していないことが発覚した場合は、知らなかったでは済まされず、SIMカードは無効化され、最低でも3年以下の懲役、故意や組織犯罪など悪質な場合は無期懲役に処される可能性がある。
