2025年12月5日(金)

革新するASEAN

2025年8月25日

域内統合のさらなる深化と域外連携拡大を目指す

 こうした中、ASEAN諸国は5月下旬、マレーシアで開催した第46回首脳会議において、今後20年のビジョン「ASEAN 共同体ビジョン2045:強靭で革新的、ダイナミックで人間中心のASEAN」を採択した。

「ASEAN 共同体ビジョン2045」は、2015年のASEAN共同体発足後10年間の行動計画「ASEAN共同体ビジョン2025」の後継として位置づけられる。このうち経済的側面を実行するための5ヵ年計画「ASEAN経済共同体(AEC)戦略計画2026–2030」は、6つの戦略目標(Strategic Goals)と44の個別目標(Objectives)、192の戦略的措置(Strategic Measures)で構成されており、第1の戦略目標「行動重視の共同体(An Action-Oriented Community)」の個別目標としては、域内物品貿易の強化、サービス統合と競争力の強化、魅力的な投資先としての地位確立、金融統合・包摂の深化などが盛り込まれている(第2表)。

 首脳声明では、ASEAN域内貿易・投資を強化・促進すると同時に、ASEAN+1(プラスワン)自由貿易協定(FTA)および地域包括的経済連携(RCEP)協定の活用・近代化などにより、世界貿易の不確実性とサプライチェーン停滞リスクの軽減に努めるほか、湾岸協力会議(GCC)といった新たな新興パートナー国・地域との連携を強める方針を示した。

期待される日本・ASEANの連携強化

 ASEAN諸国では、中国に比べた相対的な関税率の低さによる代替輸出といったプラスの影響は引き続き想定されるものの、トランプ政権による相互関税の影響はなお不透明であり、同政権が求める中国系企業による迂回輸出への対応を強化しつつ、輸出先の多角化などに取り組む必要がある。

 中長期的には、ASEAN各国内の経済構造改革による内需拡大と産業高度化による輸出競争力の強化が求められる。2045年までのAECのさらなる深化に向けては、外部パートナーとの経済協力強化やグローバルバリューチェーンにおけるASEANの地位向上など、ASEAN諸国だけでは実現が難しい目標も少なくない。産業高度化に資する投資拡大やエネルギートランジションに関わる技術・ファイナンス面での支援など、日本の企業や金融機関、政府による貢献の余地は多く、こうした連携強化を通じた日本のプレゼンス拡大が期待される。

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