一部の中国人からすると「明文化せず、ルールを厳しくしないことにも問題がある」と見えるようだ。例えば、外国人が日本で会社を設立し、事業を行うための在留資格、経営・管理ビザは500万円以上の出資金、または2人以上の常勤職員を雇用するという条件をクリアすれば、比較的取得が容易だ。しかし、一度取得してしまえば、その後のチェックは甘く、日本に居続けなければならないなどの「縛り」はない。
そのため、同ビザで来日し、日本の不動産を取得した後、帰国してしまう中国人もいる。ビザ取得資格の条件としては問題ないが、日本人としてはどこか釈然としない。
「外国人=悪」なのか?
問題の背景の冷静な分析を
こうした問題を踏まえ、日本政府は長期目線で、中国人など外国人が増えることによるリスクも想定した制度設計を検討しなければならないと考える。むろん、日本の大学、特に理系の大学院などでは「留学生がいなければ研究室を維持できない」という問題も生じている。
都内のある名門私立大学の教授は「留学生が増えること自体は悪いことではない。日本人が減少している以上、今後も高い偏差値を維持するためには優秀な留学生が欲しい」と本音を語る。
しかし、「日本人を優遇したいが、偏差値も維持したい」、あるいは「安い労働力が欲しいが、問題(と日本人が感じる)行動をする外国人労働者は不要」というのは、ある面では「いいとこ取りのご都合主義」にも映り、持続可能性は低い。日本側が「外国人を入れてやっている」という「上から目線」の態度のままでは、お互いのすれ違いや誤解を生むだけだろう。
中国人をはじめ、既に多くの外国人が日本に住んでいる今、「いかに日本を守るか」という観点からも、国際感覚を踏まえた長期目線での制度設計が求められている。
7月に行われた参議院選挙でも外国人問題が争点の一つになったが、「外国人=悪」という短絡的な見方をするのは一面的である。まずは、外国人が増えている現状を直視し、それをしっかりと分析し、日本の制度のどこに盲点があるのかを見極め、不備を早急に改める必要があるだろう。
その上で、今後も中国人など外国人を入国・在留させる選択をするのであれば、オランダなどが実施する「市民化テスト」のようなものにより、言語の読み書きや常識を問い、一定のスクリーニング基準を設けることも一案だ。
いずれにせよ、従来のような行き当たりばったりの外国人政策は、そろそろ改めなければならない時期がきている。
政府だけでなく日本人一人ひとりも、単に中国人に悪感情を抱くだけではさらなる軋轢を生むだけだ。そうではなく、問題の背景を冷静になって考えるべきではないかと感じている。その上で「いかに日本を守るか」という視点を持ち、そのために必要な実効性の高い政策を実施していくべきではないだろうか。
