自然の中で自然に還るという思想が共感されているのだが、同時に、都市近郊に公園を整備するという目的のためにも用いられている。もちろん、墓苑区域に人が勝手に立ち入ることができる訳ではなくて、樹林の中の道路を人々が散歩したり、ジョギングしたりするために使われている。墓苑として埋葬料を得ることができるので、公園の維持費に使うことができる(池邊このみ「花に囲まれた永遠の眠り─墓地が地域のガーデンとなる時代へ」『地域開発』2013年8月号参照)。
日本では、高度成長時代から造成されたニュータウンが数多くあるが、高齢化のために衰退し、地価が下落しているので新たに投資をして活性化することの難しい郊外住宅も多い。しかし、郊外住宅としては遠くても、墓地としては近いところがほとんどである。しかも、墓地は住宅地よりも高く販売できる。郊外住宅の駅や幹線道路から遠い地域を、公園を兼ねた樹林墓地として住宅地よりも高く販売し、その利益によって、近いところの住宅地を再開発することが可能になる。
これができにくいのは、宗教法人、行政機関しか墓地を運営できないという規制のためである。宗教法人が、宗教を問わずとして運営している墓苑もあるのだから、宗教法人に限ることはないのではないか。死者の尊厳を守ることは必要だが、宗教法人、行政機関しか守れないという理由はない。
私は、思わぬ規制が様々な経済活性化を妨げているのだと思う。第3の矢の成長戦略とは、1つの矢ではなく、無数の矢の集合体と考えるべきものだ(中には筋の悪い矢も交じっている)。「思わぬ規制」駆け込み窓口が必要なのではないか。
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