Xプライズ財団をご存知だろうか。1995年に米国で設立された非営利団体で、グローバルインセンティブコンペティションを利用して、世界の大きな課題に対する解決策を生み出すべく活動している。
これまでも二酸化炭素(CO2)の回収や月面着陸などを競うコンペティションを行ってきた。現在進行中の「XPRIZE Healthspan」は、人間の老化に対するアプローチに革命を起こすことを目的とした、7年間にわたる世界的なコンペティションで、賞金総額は、1億100万ドルに上る。
これに参加するのが、「AutoPhagyGO」だ。世界600チームが参加する中で、今年5月、準決勝に進むトップ40の一つに選ばれ、決勝進出に向けた臨床試験を行っている最中だ。同社の石堂美和子代表取締役社長に話を聞いた。
「XPRIZE Healthspan」は、私がかつて製薬業界で働いていた時に感じていた限界を超えてくれるコンペティションです。当然ですが、製薬の場合、何年もかけて薬の効果の因果関係を検証するわけです。一方で、XPRIZEは「どれが効いたかは問いません」というアプローチです。
疾患を抱える方に対しては問題が生じる可能性がありますが、健常な人を若返らせることを目的とした取り組みなので十分に実現可能なアプローチなのです。英・グラクソ・スミスクライン(GSK)のような大手製薬企業もオフィシャルスポンサーになっているので、未病の分野の製薬についてもこれから競争が活発になるのではないかと思います。
コンペティションで求められているガイドラインでは、認知機能、免疫機能、筋肉を測定して10年若返らせるというものです。決勝まで進めば、1年かけて臨床試験を行います。どのように若返りを測るのかという点について疑問に思われるかもしれませんが、年齢ごとの自然な機能低下をモデル化し、それを基にどの程度改善すれば「10年戻った」といえるかのしきい値が設定されます。
実際に1年で本当に効果が出るのかどうかは難しい面もあります。目標を達成できるチームが出ないとも限りません。ただ、10年若返らなくても5年若返るだけでも大いに意義があるはずです。
月面着陸のプロジェクトでも、最終的に達成したチームはありませんでしたが、そこから上場企業が誕生しました。これをステップにして次のフェーズに進むということだけでも意味があると思います。
今回のコンペティションでは、私たちを含めて日本から6チームが準決勝に残りました。圧倒的に米国が多い中で、日本は堂々の2番手につけています。
