Wedge2025年11月号特集「未来を拓く「SF思考」 停滞日本を解き放て」の取材をしている最中、ポッドキャストで、某新聞社の科学記者が「ハイパーカミオカンデ」を取材した話を聞いた。カミオカンデといえば、ニュートリノを発見した故・小柴昌俊さん(東京大学名誉教授)、スーパーカミオカンデの梶田隆章さん(東大卓越教授)が、それぞれノーベル物理学賞を受賞したことは知っているが、それ以上は詳しくは知らなかった。
1897年の「電子」から2012年の「ヒッグス粒子」の発見まで17個の素粒子発見年表(SCIENCE PHOTO LIBRARY/AFLO)
しかも、新しく建設が進むハイパーカミオカンデでは、「陽子崩壊」というものを調べており、それを観測することができれば、現在の「標準理論」から「大統一理論」に発展させることができるという。
科学の素養のない私にとって、何やらSFっぽく感じられた。そんなことを、編集部内で雑談していると、同僚の一人が「私の父、素粒子を研究していました」と。筑波大学で素粒子の研究をしていた原和彦さんだ。研究者としてのハイライトは「ヒッグス粒子」の発見に携わったことだ。
ヒッグス粒子は2012年7月、スイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)で発見された。英国人物理学者、ピーター・ヒッグスが1964年にその存在を提唱して、48年後に実際に確認された。原さんはその現場にいたのだ。ヒッグスらは2013年にノーベル物理学賞を受賞した。
「ヒッグス粒子は『神の粒子』とも呼ばれています。それは、質量を与えることで物質をつくることを可能にした粒子だからです」と、原さんは教えてくれた。「神の粒子」……。これも、SFっぽい。
