2025年12月6日(土)

未来を拓く「SF思考」

2025年10月25日

 そもそも、生き物、地球、宇宙などすべての物質は素粒子からできている。東大素粒子物理国際研究センターのホームページなどを参考に解説してみる。

 19世紀後半「電子」(電子は素粒子)の発見によって、物質の最小単位が「原子」ではないことが分かった。宇宙観測や加速器の技術向上で、1964年に「クォーク」という素粒子の存在が予言され、69年に実際に発見された。その後、素粒子の発見が続き、最後17番目に発見されたのがヒッグス粒子で、カミオカンデで観測されたニュートリノも素粒子の一つだ。

 こうして100年かけて構築されたのが、素粒子物理学の「標準理論」と呼ばれる。しかし、これだけでは説明できない課題があった。138億年前の原初宇宙では、1つの「力」が存在し、その後「重力」「強い力」「電磁気力」「弱い力」の4つに分岐したとされる。

 「弱い力と電磁気力はW/Z粒子(ゲージ粒子と呼ばれる素粒子)の発見により統一(「電弱統一理論」)されました。『強い力』も統一的に説明することができれば『大統一理論』が完成します。さらに、『重力』も統一できることを『万物の理論』、『超統一理論』と呼びます」(原さん)

仮説と修正の繰り返し
人類が続けてきた思考実験

 世界を構成するものは何かについて、人類は長らく考えてきた。ギリシアの哲学者・デモクリトスが唱えた「原子論」などから始まり、現在の素粒子まできたが、これで終わりではない。これからも「思考実験」は続き、実証が行われていく。思考実験とは、「仮説」づくりであって、SFも思考実験の一つだといえる。

 科学史は「修正」の繰り返しだ。アリストテレスは、世界は火、空気、水、土の4元素からできていると考えた。天動説に対して地動説を唱えたコペルニクスの本は禁書扱いされた。万有引力で知られる「ニュートン力学」も、アインシュタインが「相対性理論」で新たな重力理論に発展させた。つまり、仮説と修正の繰り返しの中で常に新たな発見を生み出してきたのだ。

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Wedge 2025年11月号より
未来を拓く「SF思考」 停滞日本を解き放て
未来を拓く「SF思考」 停滞日本を解き放て

SFは、既存の価値観や常識を疑い、多様な未来像を描く「発想の引き出し」だ。かつて日本では、多くのSF作家が時代を席巻した。それはまさに、科学技術の進展や経済成長と密接に結びついていた。翻って、現代の日本には、停滞ムードが漂う中、様々な規制やルールが、屋上屋を架すかのようにますます積み重なっている。だが、それらを守るだけでは新たな未来は拓けない。硬直化した日本社会をほぐすため、今こそ「SF思考」が必要だ。


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