2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月16日

 中国がもし裁判所を無視すれば、無法者であることを暴露することになる。アジア・太平洋の海洋国が中国に対抗して団結する理由になる。我々の法律戦をしよう、と述べています。

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 中国とベトナムの南シナ海における対立は1カ月以上経過し、双方ともに引く気配がありません。ホームズは、中国が海軍艦船を派遣しているのはより強く出るためか、ベトナムの武力への警戒があるためではないかと指摘していますが、凡そその通りでしょう。

 論説で、ホームズは、西沙、南沙諸島のうち、海洋法条約に言う島に当たるのはウディ島以外になく、他は「岩」であるからEEZの起点にはならず、それを法律的に確立すれば、南シナ海はほぼ公海であるから、中国がいわゆる「9点線」により囲まれた地域の管轄権を主張しているのを否定し得る、と言っています。これは傾聴すべき尤もな議論です。

 南シナ海のような広大な地域に「歴史的権利」を主張することを、国連海洋法条約は認めていません。これを認めるか否かは国際社会全体にかかわる問題です。中国と紛争相手国の2国間問題ではなく、中国とASEAN間の問題でもありません。この「歴史的権利」主張については、日本も米国も自らの問題として対処していく立場にあるし、そうすべきです。

 西沙、南沙を日本はサンフランシスコ条約で放棄しています。千島、樺太と同じです。日本は領有権がどの国に帰するかについては発言しない方がよいでしょうが、ただ、ある環礁が島か岩かについては発言することができるでしょう。南シナ海問題は、中国が国際規範を尊重するか否か、現状を力ずくで変えることを選択するかという重要問題です。日本も重視して対応しなければなりません。

 なお、西沙、南沙諸島の地位問題を海洋法裁判所の裁判に決めてもらうことができれば、それが最も明快な解決策ですが、中国が応訴しなければ裁判になりません。西沙、南沙諸島が島か岩かを決めることは、裁判以外の方策、例えば国際海事機構による勧告的意見要請などを利用する工夫が必要であるように思われます。

[特集]南シナ海をめぐる中国とベトナムの衝突

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