5月5日付け仏ル・モンド紙で、Sylvie Kauffmann同紙論説主幹は、世銀が、今年にも中国が米国を抜いて世界一の経済大国になると予測したが、その計算方法は疑問であり、また、大国の資質から言って、中国を過大評価すべきではなく、米国の優位は当分保たれよう、と述べています。
すなわち、世界銀行は、4月30日、今年(2014年)、中国が米国を抜いて世界一の経済大国になると発表した。1872年に米国が英国に代わってずっと世界第1位の経済大国であったことを考えると、驚きの事実である。
どうしてこうなったのか。それは、世銀が、国際比較プログラムで、購買力平価(PPP)を用いて国内総生産(GDP)を測ったからである。既に2005年には同様の計算方法で、中国経済は米国経済の約半分、43%に達していた。その後、中国経済は予想よりも早く成長を遂げ、2011年のGDPは、米国の87%に達した。
一方、為替レートを考慮して計算すると、値は異なってくる。例えば、2012年の米国のGDPは162億ドルとなり、これは中国の82億ドルの約2倍である。この計算方法によれば、米国の優位は、2024年まで続く。
PPPによるGDPの計算では、今年既に中国が世界第1位の経済大国になると予測されるばかりではなく、新興国全体の成長が、既存秩序を覆す。例えば、インドが、日本を抜いて世界第3位の経済大国になり、ロシア、ブラジル、インドネシア及びメキシコが12位以内に名を連ねる。
この計算方法と予測に関しては、疑問が出されている。Bloomberg Businessweek誌において、JP Morgan Chase銀行の責任者David Hensley氏が、為替レートを考慮したGDP計算の方が望ましいとした。PPPは、物価水準が世界で単一であることを前提としているので、現実に即していない、と言う。
果たして、中国は米国に追いついたのだろうか。決してそうではない。米国は、世界の5%の人口で、世界のGDPの20%を創出している。また、1人当たりのGDPに換算すると、中国が13億人で割らなければならないのに対し、米国は3億1400万人で分ければ良い。この意味では、カタールが世界一である。
また、国力を測るには、他の要素も考慮すべきだろう。教育水準、環境の質、国民の健康、軍事力、通貨準備高、研究機関や大学の数、そして西側なら、民主主義と自由の度合いも考慮するだろう。このどれを取っても、中国の目覚ましい経済成長にかかわらず、中国が今年、米国を凌ぐことはないだろう。