2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年8月7日

 深夜営業ができなくて国際都市としての競争力が落ちると心配している人もいる。しかし、すべての人が深夜働く必要もない。深夜労働が本当に生産性を高めるなら、その人々は高賃金を得られ、高賃金の人にサービスする深夜営業の飲食店は高い料金を請求でき、そこで働く人にも高い賃金を支払うことができる。おそらく、深夜でも安く人を雇えたので、生産性の低い深夜労働が行われていたのだろう。こういう営業がなくなっても国際都市間の競争に勝つには何も困らない。

 ロンドン、ニューヨーク、香港と戦っている人は、夜中に高い酒を飲み、高いメシを食べていると私は思う。牛丼や100円ハンバーガーで世界と戦っている訳ではない。

人手不足で雇用は流動化

 アベノミクスの第3の矢の成長戦略では、雇用の流動化が大きな柱になっている。雇用の流動化は第1次安倍政権の時からの課題であったが、反対が大きく進展していない。経済成長は、より生産性の低い仕事からより高い仕事に人々が移ることによって実現する。だから、雇用の流動化が成長戦略の柱になるのは当然のことだ。

 しかし、人が余っている時に雇用の流動化をしようとしてもうまくいくはずがない。流動化とは首切りだとしか思われないからだ。人手不足の時なら、雇用の流動化とは生産性の低い仕事から高い仕事に人々が移ることだと正しく理解されるだろう。人手不足になれば、自然発生的に雇用の流動化が進む。

 福島第一原発事故収束、震災復興、東京オリンピックのための工事をどうするのかという批判もあるかもしれない。これについては前にも書いたので繰り返さないが、不要不急の工事をするから人手が不足する。原発事故処理についての、地下水流入を遮断する工事など、するべきことはしなくてはならないが、住民も望まない巨大防潮堤や人が住むかどうかも分からない高台工事を止めるべきだ。新国立競技場の斬新すぎるデザインは変更しないようだが、職人不足の時に、予定のコストで建設できるのだろうか。
 

◆WEDGE2014年7月号より









 

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