トランプ米大統領
アメリカのドナルド・トランプ大統領は9日、欧州の首脳たちを「弱い」と批判するとともに、アメリカによるウクライナ支援を縮小する可能性を示した。米政治専門サイト・ポリティコのインタビューで発言した。
トランプ氏は多くのテーマにわたったインタビューで、「衰退している」欧州諸国が移民の管理に失敗したと批判。ウクライナとロシアの戦争についても、断固とした行動で終わらせることもできなかったと述べた。また、欧州諸国がウクライナを「倒れるまで」戦わせていると非難した。
トランプ氏は、ヨーロッパの多くの国がこのままでは「もはや存続可能な国ではなくなる」と警告。「彼らが移民に関してやっていることは、大失敗だ」とした。
そして、ハンガリーとポーランドだけが移民に関して「非常に良い仕事」をしているとし、ほとんどの欧州諸国は「衰退している」と述べた。
ロシアとウクライナの戦争の終結にヨーロッパが力添えできるかと問われると、トランプ氏は、「みんな口先だけで、何も生み出さない。そして戦争は延々と続いている」と答えた。
トランプ氏は、アメリカが推進する和平案について、ウクライナの交渉担当者らが「とても気に入っている」と主張し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はそれをまだ読んでいないと述べた。
ウクライナとロシアの和平をめぐっては、トランプ氏は7日、ゼレンスキー氏が主な障害になっていると、根拠を示さずに記者団に説明していた。また、アメリカが双方に提示している和平案に対し、ロシアは「問題なし」との立場だと主張していた。この案はウクライナに大幅な譲歩を求めるもので、同国を支援する国々は、将来の侵攻に関してウクライナを危うい状況に置くと懸念している。
ウクライナでの選挙実施を要求
トランプ氏はポリティコのインタビューで、ウクライナでの選挙実施を改めて求めた。
同氏は、選挙を実施しない理由としてウクライナが「戦争を利用している」と主張。「(ウクライナは)民主主義について話すが、ある時点からはもう民主主義ではなくなる」と述べた。
ウクライナでは、ゼレンスキー氏の5年間の大統領任期が昨年5月で終わりを迎えた。たが、ロシアの侵攻で戒厳令が出されていることから、選挙は停止されている。
このトランプ氏の発言を受け、ゼレンスキー氏は記者団に、「選挙の準備はできている」とし、改正法案の作成を指示すると述べた。また、アメリカなどの支援で安全が確保されるなら、選挙は60~90日以内に実施できるとした。
トランプ氏はまた、イデオロギー的な分断のため、アメリカとヨーロッパの同盟関係に亀裂が入る恐れがあると、インタビューで主張した。
欧州の首脳たちは弱いと考えるのなら、その弱い相手を同盟相手にし続けられるのかと記者に質問されると、トランプ氏は「場合による」と返答。欧州首脳らについて、「私は弱いと思っているが、政治的に正しくあろうとしているのだろうとも思っている。どうすればいいのか分からないのだと思う」と述べた。
トランプ政権は、33ページにわたる新たな国家安全保障戦略を5日に公表した。その中で、ヨーロッパは「文明の消滅」の危機に直面しているとしたほか、一部の国について、信頼できる同盟国であり続けられるか疑わしいと主張した。
一方、ロシアは、自分たちを脅威と位置づけないアメリカのこの新戦略を、ロシアの見方と「ほぼ一致している」と前向きに評価している。
ウクライナ・欧州案を提示へ
トランプ氏のインタビューが公表された前日の8日には、欧州首脳らがロンドンに集まり、ウクライナでの戦闘停止に向け、継続的な共同での取り組みについて話し合った。
アメリカ主導の戦争終結に向けた取り組みが進む中、欧州の首脳たちは、自分たちも役割を得ようとしている。アメリカ側の動きに対しては、迅速な解決を優先するあまり、ヨーロッパの長期的な利益を損なうのではないかと恐れている。
トランプ氏はゼレンスキー氏に対し、和平案に合意するよう圧力を強めており、領土をロシアに割譲するよう促している。
ゼレンスキー氏は9日、ソーシャルメディア「X」への投稿で、ウクライナとヨーロッパが「戦争終結に向けてあり得るステップの、すべての要素」について積極的に取り組んでいるとした。また、ウクライナとヨーロッパの和平案の要素がさらに発展したと述べた。
ゼレンスキー氏はその後、記者団に、その和平案が10日にアメリカに示されると認識していると述べた。
米当局者らはここ数週間、戦争終結を仲介しようと、ウクライナとロシアの当局者らと別々に協議している。これまでのところ、合意には至っていない。
ゼレンスキー氏は、和平案がウクライナを将来の攻撃に対して危うくするようなものになることを懸念している。そうした和平案をアメリカが支持しないよう、欧州諸国と北大西洋条約機構(NATO)の指導者らに対応を求めている。
こうしなか、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は9日、アメリカの新たな国家安全保障戦略について、もっともな部分や理解できる部分もあるが、それ以外の部分はヨーロッパの観点から受け入れられないと批判した。
メルツ氏は、アメリカがヨーロッパの「民主主義を救う」必要があるとの見方に反発。そうした問題についてヨーロッパは自分で対処できるとした。
この戦略は、トランプ氏が9月に国連で行った演説と同様のレトリックを使っている。トランプ氏はこの演説で、西欧諸国と、その移民やクリーンエネルギーへの取り組みに対して厳しい批判を展開した。
(英語記事 Trump criticises 'decaying' European countries and 'weak' leaders)
