「FIFA平和賞」を受賞したトランプ米大統領は、「私の人生における偉大な栄誉の一つだ」と語った。画像は授与式で握手するトランプ氏(左)とインファンティーノFIFA会長(5日、米ワシントン)
国際サッカー連盟(FIFA)が新たに創設した「FIFA平和賞」をアメリカのドナルド・トランプ大統領(79)に授与したことをめぐり、英ロンドンの人権団体は9日、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長(55)が政治的中立に関する内規に違反した疑いがあるとしてFIFA倫理委員会に調査を要請したと明らかにした。
インファンティーノ会長は、米ワシントンで5日に行われたサッカー男子の2026年ワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会の組み合わせ抽選会で、「FIFA平和賞」をトランプ氏に授与した。
この賞は、インファンティーノ会長が創設したもので、「平和のために並外れた行動を取り」、「世界中の人々を結びつけた」人に贈るとしている。
会長はこのところ、トランプ氏を支持する内容をソーシャルメディアに投稿したり、インタビューで語ったりしている。
FIFA会長には「一方的に決める権限ない」
BBCスポーツが確認した苦情申し立て書の中で、英ロンドンに拠点を置く人権団体フェア・スクエアは、インファンティーノ氏がFIFAの中立規則に対する「4件の明らかな違反を犯した」と主張している。
「現職の政治指導者へのこのような賞の授与は、それ自体がFIFAの中立義務に対する明らかな違反行為だ」と、同団体は書簡で指摘している。
そして、「FIFAの会長には、組織の使命や戦略的方向性、政策、価値観を一方的に決定する権限はない」と訴えている。
BBCスポーツはFIFAにコメントを求めている。
2026年W杯の組み合わせ抽選会は5日、ワシントンのジョン・F・ケネディ・センターで行われ、華やかな式典にインファンティーノ氏とトランプ氏はそろって現れた。同大会はアメリカ、カナダ、メキシコの共同開催で、来年6月11日~7月19日の日程で開かれる。
トランプ氏には、大きな金色のトロフィーが授与された。また、インファンティーノ氏からメダルと認定証も受け取った。
スピーチしたトランプ氏は、自分が外交的に介入することで「数千万の命を救った」と主張し、「戦争を勃発直前に阻止してきた」と述べた。そして、「これはまさに私の人生における偉大な栄誉の一つだ」と語った。
授与式の前には動画が上映され、続いてインファンティーノ氏が演説した。その中で、「これこそ我々が指導者に求めるものだ」、「大統領、いつでも私の支援を頼りにしてください」と、インファンティーノ氏は述べた。
インファンティーノ氏は10月には、トランプ氏こそノーベル平和賞に「間違いなくふさわしい」とインスタグラムに投稿していた。
11月には、フロリダ州マイアミで開催されたアメリカン・ビジネス・フォーラムでのインタビューでこう述べていた。「我々は皆、(トランプ氏がアメリカで)行っていることを支持すべきだ。かなり良い方向に進んでいると思うからだ」。
「スポーツの利益に反する危険な行動」を許容と
フェアスクエアは今回、インファンティーノ氏がトランプ氏の大統領就任式に招待された後の1月にインスタグラムに投稿した動画についても、「トランプ大統領の政治的アジェンダを支持していることを示唆」する内容だと指摘している。
同団体のプログラム・ディレクター、ニコラス・マクギーハン氏は、「今回の苦情申し立ては、インファンティーノ氏がドナルド・トランプ大統領の政治的アジェンダを支持していること以上の問題を含んでいる」と述べた。
「より広く言えば、FIFAの不合理な統治構造がジャンニ・インファンティーノ氏に組織の規則を公然と無視し、世界で最も人気のあるスポーツの利益に直接反する、危険な行動を取ることを許容している実態に関わるものだ」
