2025年12月19日(金)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2025年12月19日

中国という「資源のブラックホール」と化した供給網

 さらに事態を深刻にさせているのが、既存の供給網がズタズタになりつつある現状だ。

 かつて私は、トランク一つで中国の奥地へ飛び、現金を積んでレアメタルを買い付けたものだ。当時はビジネスライクな交渉が通じた。しかし、今は違う。

 世界のレアメタル供給の首根っこを押さえる中国は、環境規制の厳格化と戦略的資源備蓄を理由に、タングステンやレアアース、アンチモン、ガリウム、ゲルマニウムなどの輸出管理を年々、いや月単位で強めている。

「世界の工場」として資源を安く加工し輸出していた中国は、いまや「資源のブラックホール」となり、自国のハイテク産業や軍事産業での消費を最優先し始めた。私が付き合いのある中国のサプライヤーたちも、「輸出許可が下りない」「政府の指導で出荷量が制限された」と口を閉ざすことが増えた。彼らの背後には、常に中国共産党の影が見え隠れする。もはや自由貿易の論理は通用しないのだ。

 目を転じれば、かつてのフロンティアであった中央アジアやアフリカも変質した。クーデターや政情不安により、カントリーリスクは許容度を超えた。資源メジャーでさえ撤退を余儀なくされる地域が増えている。

 ロシアはウクライナ侵攻以降の制裁で西側市場から完全に切り離された。チタンやパラジウムといった重要鉱物の供給ルートは寸断されたままだ。

 そして南米のリチウム生産国では「資源ナショナリズム」が台頭し、外資の自由な活動を阻んでいる。「自国の資源は自国のために使う」という主張は、正論ではあるが、資源を持たざる国・日本にとっては死活問題だ。


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