フィンランド代表として今年のミス・ユニバース世界大会に出場したサラ・ジャフチェ氏(バンコク、11月5日)
ケリー・アン記者(シンガポール)、BBC中国語
先月タイで開催されたミス・ユニバース世界大会に出場したフィンランド代表が目尻を引っ張る写真がソーシャルメディアで拡散され、人種差別だとして炎上している。
サラ・ジャフチェ氏(22)は先月末、「中国人と食事中」とのキャプションと共にこの写真を投稿した。この「slanted eye(つり上がった細い目)」のポーズは、歴史的にアジア人をあざ笑うのに使われてきた。その後、同氏は、ミス・フィンランドの王冠を剥奪(はくだつ)された。
この投稿は、日本や韓国、中国でジャフチェ氏に対する批判を呼び、さらにフィンランドの代表的な航空会社フィンエアーにまで影響が波及した。
フィンランド国内では15日、ペッテリ・オルポ首相が「そのようなジェスチャーをするのは軽率で愚かだ」と騒動に言及。この騒動は「国にとって有害だ」と語った。
フィンランドの大衆紙イルタ・サノマットによると、ジャフチェ氏は、夕食中の頭痛への反応としてそのジェスチャーをしたと主張。また、12月11日の投稿に付けられた不適切なキャプションは、本人の同意なしに友人が追加したものと述べた。
ジャフチェ氏は写真について謝罪し、「多くの人々に悪感情を引き起こした」と述べた。
「決して私の意図ではなかった。私にとって最も重要なことの一つは、人々、その背景や違いへの敬意だ」と、ジャフチェ氏はインスタグラムに記した。
しかし、この謝罪がフィンランド語で書かれていたことから「誠意がない」との批判も集めた。
謝罪の投稿につけられたコメントには、「フィンランド国外の中国人が理解できるとは思えない。なんて思いやりがあって誠実な謝罪だろう」と皮肉るものもあった。
別のコメントには、「あんなことをする必要はなかった。アジア人はあなたに何もしていない。私たちはまだあなたに失望している」と記されていた。
連立政権の右翼政党の議員も
こうした中、ジャフチェ氏を支持するとして、フィンランドの右派議員2人が、同じジェスチャーをした写真を投稿した。
ユホ・エーロラ議員とカイサ・ガレデウ議員の投稿は、批判を受けて削除された。エーロラ議員は謝罪したが、ジャフチェ氏が「不釣り合いに厳しい処分」を受けたと感じたと付け加えた。
オルポ首相は、議員らの行動を「子どもじみている」と非難し、議員は模範となるべきだと述べた。
地元メディアによると、2人が所属する右翼のポピュリスト政党「フィン人党」は、2人が処分を受けるべきかどうかを検討している。
フィンエアーは、同国の公共放送YLEに対し、この騒動の影響を受けているとし、フィンランドへの観光をボイコットするよう呼びかける動きがあったと述べた。
フィンエアー日本支社のXアカウントは16日、「一部のフィンランド議員が言及した発言や投稿は、フィンエアーの価値観を示すものではありません」と日本語で投稿。
「多様なバックグラウンドを持つ社員と、世界中のお客様に支えられる航空会社として、全ての方に敬意をもってお迎えすることをお約束します」と述べた。
この騒動は、日本や韓国、中国など東アジア諸国でも注目を集めている。
朝日新聞によると、フィンランド在住の日本人男性が、反アジア人差別の調査を求める署名活動を開始し、14日夜までに7000筆以上の署名が集まった。
日本のフィンランド大使館は、フィンランドの人種差別への取り組みについて「数多くの意見や質問」を受けたと述べた。
同大使館は15日、「人種差別はフィンランド社会において依然として課題であり、その解決には継続的かつ断固とした努力が必要です」と、Xへの投稿で認めている。
ジャフチェ氏の行動をめぐる騒動は、タイで開催された混乱続きのミス・ユニバース世界大会の後日談の様相をなしている。この大会は、運営に対する抗議や不正疑惑に見舞われた。
ミス・フィンランド協会は、ジャフチェ氏の王冠剥奪は「困難だが必要な措置だった」と述べた。
同協会は声明で、「ミス・フィンランドは模範的な立場にあり、出身、背景、容姿に関係なくすべての人を尊重することが求められる」と言明し、「今回の出来事が引き起こした被害について、特にアジアのコミュニティー、そして影響を受けたすべての人々に対して深くおわびする。人種差別はどのような形であれ決して許されない」と記した。
(英語記事 Miss Finland's viral 'slanted-eyes' photo stirs racism firestorm)
