フィナンシャル・タイムズ紙の12月9日付け社説が、『ホワイトハウスによる西欧同盟との断絶』と題して、トランプの「国家安全保障戦略」は防衛と経済につき欧州の決断を迫る警告だと述べている。主要点は次の通り。
米国の「国家安全保障戦略」(以下NSS)は、通常は漸進的に進化する文書であるが、トランプ政権による2025年戦略は、急進的な断絶を示すものだ。これは政策文書というより、意思表明の宣言に近い。中露にとっては好ましい点が多く、欧州には厳しい警告になっている。
この文書は、米国が過去80年にわたり政策の基盤としてきた共通の価値観から離脱しつつあることを示唆している。多くの人が米国の富と力の源泉とみなしてきた民主主義と人権の擁護、グローバリズム、自由貿易などへのコミットメントを、むしろ米国弱体化の理由として描いている。米国主導の「ルールに基づく秩序」を支えてきた同盟関係をも「国家の性格を損なってきた」と見做している。
今回のNSSは、大国が世界を勢力圏に分割することを構想している。西半球では米が支配的地位を占める。これは、プーチンのロシアがほぼ20年にわたり唱えてきた世界観だ。他の国による世界的、あるいは場合によっては地域的な支配は、阻止しなければならないとしつつも、そうした取り組みに「血と財産を浪費する」ことは拒否する。
中国は、この文書の非対決的な考え方を評価するだろう。アフリカや中東などの独裁者達の多くも、「リベラルな介入主義」からの撤退を歓迎するに違いないが、これらの国の多くの市民は、民主化への支援がなくなることを嘆くだろう。
欧州の指導者達が最も憂慮すべきことは、NSSが依然として価値観や制度へのコミットメントを維持する欧州を、同盟国ではなく、競争相手あるいは脅威として描いている点である。欧州連合(EU)は、政治的自由や主権を損なっていると非難されている。米当局者は、気候変動対策やテック企業規制といった「米国の利益に不利な」政策を推進するEUと、他方で、依然として防衛を米に期待する北大西洋条約機構(NATO)同盟との間には矛盾があると嘆く。
この文書は、国家主権の価値を誇示するが、他方で欧州のポピュリスト政党への支援を通じて他国の主権に直接介入することを提唱しており、バカバカしさも感じさせるものだ。しかし、今年のNSSは、欧州の多くが恐れつつも、なかなか認めようとしなかった米欧同盟の断絶への道を明示している。
かかる断絶を引き起こしている最も緊急の要因は、ウクライナである。欧州の指導者達がトランプに公然と逆らうことは避けたいと考えるのは当然だが、トランプを説得できると錯覚するべきではない。
