トランプ政権が「国家安全保障戦略」を発表し、その中で、ウクライナ戦争が終わらないことについて、ロシアではなく同盟国の欧州諸国を非難するもので、暗たんたる思いであると、2025年12月8日付ワシントン・ポストでマックス・ブートが言っている。
(ロイター/Abaca/アフロ)
発表された「国家安全保障戦略」(NSS)が及ぼす効果は、プーチンを勇気付ける一方、米国の同盟国、とりわけ欧州を落胆させることになろう。NSSが MAGA(Make America Great Again:米国を再び偉大にする運動に賛同する人々)の世界観を反映しているのは驚きではないが、非常に暗い気持ちにさせられる。
NSSは二枚舌の傑作だ。トランプを「平和の大統領」と称賛しているが、彼が指揮する軍は薄弱な法的根拠で麻薬ボートとされる船を爆破し、乗船者を殺害した。
また、インドとの商業的関係を改善すると言っているが、米印関係は50%のトランプ関税によって損なわれている。さらに、米国のソフトパワーの維持を謳っているが、トランプ政権はボイス・オブ・アメリカや国際開発局を骨抜きにした。
NSSのすべてが過去の政権と異なることを言っているわけではない。NSSは「トランプ大統領は30年以上続いた米国の誤った中国観、すなわち、中国に米国市場を開放すればルールに基づく国際秩序への中国の参入を促すだろうとの見方を覆した」と言っているが、バイデン政権はこうした中国観の否定を外交政策の柱の1つとしていた。
しかしその他に関してトランプ戦略は過去との過激な決別だ。22年のバイデン NSSは人権や気候変動に十数回ずつ言及しているが、トランプ戦略には一切ない。
