このことの含意を見極める事は簡単ではないが、我々は米国が西半球の情勢に主たる関心を寄せるモンロー主義になり、それ以外の地域(欧州、アジア、中東)から順次撤退していく過程が始まったと疑われる。
ウクライナ戦争については、フランスのマクロン大統領はトランプがウクライナを裏切る可能性に言及しているが、米国の今回のNSSは、マクロンの懸念を正当化するように思われる。プーチンの報道官が、この戦略は「我々のビジョンと大筋で一致している」と述べた点も注目に値する。
NSSは、欧州が白人人口が減る「文明の消滅」に直面しているとし、欧州の現在の政権の政策と EUの政策を強く非難している。それは、欧州からの撤退の前触れではないかとさえ思われる。
広がる「疑米論」への懸念
アジア太平洋方面についても、米国の関与が減らされる方向に行く懸念は払拭できない。台湾では、中国が武力による統一を目指した場合、米国は本当に救援に来るのかを疑う、いわゆる「疑米論」が強くなっている。これも中国に間違ったサインを送ることになりかねず、懸念される。
来年の米国の中間選挙で共和党が敗北し、議会がトランプ政権の滅茶苦茶な政策にブレーキを掛けるようになることが切望されるが、どうなるかわからない。日本は、トランプの米国は信頼に値しない可能性があることを念頭に、EU諸国、豪州その他アジアの民主主義諸国との連携を強め、自前の防衛力を強化し強い国を目指すとともに、米国世論に対しても働きかけを強めるしか手はないと思う。また、中国については、米国と政策協議を綿密に行い、政策をすり合わせるべきと考える。
