欧州の第一の課題は、ウクライナ支援を一層強化し、欧州の安全保障における対米依存を減らす努力を倍加し、以てロシアに対して明確な決意を送ることだ。また、欧州は、遅くとも10年後までには、通常戦力防衛についてはその責任を果たし、米の関与を最小限に抑えるという目標を設定する必要がある。
第二に、EU加盟国とその諸機関は、欧州の経済的脆弱性を克服し、大陸全体の競争力を高める必要がある。再軍備の財源確保のための信頼できる計画のためには、新たな成長を生み出す改革を実行する必要がある。このNSSは、欧州の行動が緊急に必要なことを改めて突きつける衝撃となった。
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欧州をいじめて、何になるのか
今回のNSSに欧州が大きな衝撃を受けたのは無理からぬことである。NSSの欧州批判に若干なりとも理屈があれば救いだが、そうでないことに今の米欧関係の深刻さがある。
欧州にとっては、米国も信用できないし、中国との経済関係を今のまま維持することも不可能だ。上記の社説が、欧州の緊急課題として自らの防衛力強化と経済力の強化のふたつを挙げることには、誰しも異論はないだろう。
しかし、それには覚悟が必要だし、一朝一夕にはならない。防衛は、米国から自立し、独自の対ロ抑止力を強化することになるし、そのためにも欧州の経済力を強化せねばならない。経済力の強化には、中国に代わる供給先や中国に部分的にでも代わる新たな海外市場を見つけることが必要となる。
選択のひとつには、アジア太平洋の市場との連携強化があるだろう。環太平洋経済連携協定(TPP)との連携を進めるべきだ。日本も、欧州と協力すべきだ。EUが孤立してはならない。
欧州の対中経済緊密化が本格的になってもう10年以上になる。当時、日本から見るとリスクがあるように見えたが、なぜ欧州はその時気付かなかったのか不思議だ。
今回のNSSにおける、欧州軽蔑に近い米国の欧州批判は、政府の文書とは思えないほど激しく感情的だ。それは、思想的には2月のヴァンス副大統領のミュンヘン演説に基づいているというのが一致した見方だ。
元国務副長官のゼーリックは12月10日付けウォールストリート・ジャーナル紙への寄稿の中で、この文書が打ち出す世界観は恐らくヴァンスの元側近アンディ・ベーカーが主導した可能性が高いという。それは、余りに一方的で、矛盾も多く、納得できるものではない。
