ここで1979年にソ連が開始したアフガニスタン侵攻を思い返してみると、ソ連軍が89年に撤退するにいたった背景には、当時のゴルバチョフ政権の下でペレストロイカ(改革)を進め、西側に対しても「新思考外交」と呼ばれる協調路線をとるなど、この10年間でソ連自体が大きく変化したことが指摘できる。
仮に今回の戦争についてもアフガニスタン侵攻と同じようなタイムスパンで考えなければならないとすれば、西側として当面は、ウクライナへの軍事支援や対ロ制裁を継続し、ウクライナが抵抗の意志を持ち続ける限り同国を支援することで、ウクライナの属国化を防ぐ以外に方策が見当たらないというのが実情である。そしてこの間、ウクライナと米国の関係を維持できるかが鍵となるだろう。
日本自身も努力し
米国との関係強化を
以上で見たようなロシア・ウクライナ戦争の出口をめぐる議論は、東アジアの日本にとっても他人事ではない。第二次世界大戦後の世界は、力による一方的な現状変更を認めないという主権国家体制・国連憲章体制を前提としている。ロシアを利するかたちでの停戦は、ウクライナにとってだけでなく、国際社会にとっても、それ以外の地域で力による現状変更を誘発しかねないという意味で将来の危険を残すことになる。
日本としては、ウクライナへの支援を行いつつも、限られたリソースの中で、東アジアで同様の事態を生起させないことに注力すべきであり、それが国際社会から期待されている役割でもあるといえる。出口戦略との関わりでいえば、中国がたとえ台湾侵攻を行ったとしても、中国側に有利なかたちで戦争を終結できると思わせないことによって、翻って中国による台湾侵攻を抑止できるような体制を構築することである。
そうした抑止力の構築にあたり、トランプ2.0時代にあって、米国による東アジアへのコミットメントを引き続き確保していくことが重要である。
10月28日に行われた高市早苗首相とトランプ氏との日米首脳会談では、「日米同盟の新たな黄金時代」に向けた取り組みが合意された。その中で、日本自身の主体的・自主的な努力として、国家安全保障戦略など安保三文書が掲げる防衛費の対国内総生産(GDP)比2%目標の早期達成や、安保三文書の前倒し改定などを通じた防衛力の抜本的強化を実現することが課題となるだろう。
物価高などで国民生活に余裕がない中ではあるが、それでも地域や世界の安定のために日本自身が努力することで米国に一方的に守られるのではない関係性を強化し、私たちが生きる時代を「戦間期」にしないことを目指すべきである。

