中島厚志が読み解く「激動の経済」

2014年7月1日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

危機後に経済収斂

 収斂しない経済指標から見えるのは、想定外の債務危機があったにせよ、通貨統合とユーロ圏の形成が事前の期待通りの結果をもたらしていないことである。債務危機前、ユーロ圏各国が良好な成長を遂げ、各国経済が収斂に向かっているように見えていた時でも、必ずしも中身が伴うものではなかった。

【図表5】欧州5ヶ国:労働生産性の推移
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 現に、当時のギリシャやスペインなどは財政赤字拡大や不動産バブルなどで高成長を達成しており、これでは持続性はない。なにより、経済収斂を志向するのであれば、生産性格差が縮小して一人当たり所得の差が縮むことが最も望ましい展開と言える。

 しかし、各国とも好景気であった時期においても、生産性格差はほとんど縮まっていない(図表5)。主要国の産業構造を見ても、統合後に生産性を上げやすい製造業のウエイトが高まっているのはキャッチアップされる側のドイツであり、キャッチアップする側のギリシャやスペインでは縮小している(図表6)。

【図表6】欧州5ヶ国:製造業シェアの推移
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 一方、興味深い事実もある。それは、南欧諸国が厳しい財政健全化と経済構造調整を強いられた債務危機後、輸出が伸び、製造業のGDP割合低下が止まってきたことなどである。スペインでは、厳しい人件費削減の結果とは言え、労働生産性も向上している。

 ユーロ圏では、債務危機下で経済財政規律と連帯が強く求められて、ようやく中身を伴った経済収斂が生じていると見ることができる。

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