ウクライナのゼレンスキー大統領（20日、キーウ）
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は25日、ロシアとの戦争の終結に向けてアメリカの特使らと電話で協議した。終了後、ゼレンスキー氏はこの協議を前向きに評価した。
ゼレンスキー氏は、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使とドナルド・トランプ米大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏と1時間近く電話で協議。「真の平和に近づけるための（中略）形式や会合、タイミングについて、新たな構想」が生まれたと、終了後に語った。
ゼレンスキー氏は23日、先週末にフロリダでアメリカとウクライナの特使が合意した20項目の和平案の詳細を明らかにしていた。
同氏は25日の協議で、トランプ氏と「トランプ一家の全員」にクリスマスのあいさつを伝えてほしいと、ウィトコフ氏とクシュナー氏に依頼したという。
クレムリン（ロシア大統領府）は、自国の特使がアメリカから持ち帰った提案の内容を精査中だとした。
トランプ氏とその特使らは、2022年2月にロシアがウクライナに全面侵攻したことで始まった戦争を終結させるため、ウクライナとロシアの双方と協議を続けている。
ここ数日では、ウィトコフ氏とクシュナー氏が提示した「良い構想」をゼレンスキー氏が称賛するなど、一定の進展があったようにみえる。
25日に米特使らと詳細を協議したゼレンスキー氏は、ウクライナの外交にとって「活発な一日」になったと述べた。
また、「微妙な問題についてはまだ取り組むべきことがある」と認めつつ、「アメリカのチームとともに、これらすべてを実行する方法を我々は理解している」と付け加えた。
そして、ウクライナの首席交渉官で国家安全保障責任者のルステム・ウメロフ氏が、「アメリカのチームとの協議を続けていく」とした。
更新された20項目の和平案
先週末にアメリカとウクライナが合意した20項目からなる和平案は、数週間前にアメリカのウィトコフ特使がロシア側と合意した当初の28項目の文書を更新したものとみられている。当初の文書は、ロシアの要求に大きく沿った内容だと、広く受け止められていた。ウクライナや欧州諸国はこの文書に対し、ウクライナの事実上の降伏に等しいと反発していた。
ゼレンスキー氏は更新された和平案について説明した際、ウクライナ東部からのウクライナ軍の撤退の可能性と、そこに非武装地帯を設けることを盛り込んだ内容になっていると明らかにした。
また、ロシアが再びウクライナに侵攻した場合にアメリカ、北大西洋条約機構（NATO）、ヨーロッパが協調的に軍事対応する、安全の保証を提案している内容だと語った。
ウクライナ東部の工業地帯であるドネツク州の重要な問題については、「自由経済区」が選択肢となり得ると述べた。ウクライナ軍が撤退したとしても、その地域はウクライナが管理しなければならないとも強調した。
ロシア軍は現在、ウクライナ東部のドネツク州の約75％と隣接するルハンスク州の約99％を支配している。両州は合わせてドンバス地方と呼ばれている。
ゼレンスキー氏は、アメリカ主導の和平交渉の中で、ドンバス全域をロシアに譲渡するようトランプ氏から強い圧力を受けている。
ゼレンスキー氏はこれまで領土割譲を拒否するとともに、いかなる合意においてもウクライナに対する鉄壁の安全の保証が必要だとしている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ軍がドンバス全域から撤退しなければ、ロシアがそれを奪取すると繰り返し警告している。
クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は25日、ロシアのキリル・ドミトリエフ特使がアメリカから持ち帰った提案を検討していると述べた。
「当該資料を検討し、国家元首の決定に応じて、アメリカ側との対話を継続する」と、ぺスコフ氏は述べた。
ロシアの石油施設に攻撃、ウクライナの集落制圧
ロシアとウクライナの戦争終結に向けた外交努力が少しずつ前進する一方で、現地では戦闘が続いている。
ウクライナ軍は25日、ロシア南部ロストフ州にある主要な石油精製所を巡航ミサイルで攻撃したと発表した。
ウクライナ国境近くのノヴォシャフチンスク精製所は、ロシア軍が占領するウクライナ東部での作戦に必要な燃料を供給する上で非常に重要な施設となっている。
一方でロシア国防省は、ウクライナ・ドネツク州の集落スヴィアト・ポクロフスケを制圧したと発表した。
今週初めには、激しい戦闘が続くドネツク州シヴェルスク町からウクライナ軍が撤退している。
ロシア軍は、シヴェルスクを制圧したことで、ドネツク州でウクライナが維持している最後の「要塞（ようさい）地帯」の街スラビャンスクとクラマトルスクへさらに近づくことになる。
（英語記事 Zelensky hails 'new ideas' on peace after talks with US envoys）
