2026年1月15日(木)

Wedge REPORT

2026年1月15日

 2025年は、企業や自治体、教育現場などでAIの本格導入が進んだ年であった。AIが社会の知的インフラとして機能し始めた今、「情報リテラシー」に加え、科学的根拠に基づいて判断する力である「科学リテラシー」も欠かせない。AIが生成する科学的な用語やデータを伴う、一見信頼できそうな情報の真偽を見極める力も問われるようになったからだ。様々な情報があふれる現代において、必要な科学リテラシーとは何か。分子生物学者でサイエンスコミュニケーションを専門とする新潟医療福祉大学教授(東京大学名誉教授)の石浦章一氏に話を聞いた。

トランプ大統領は、妊娠中の解熱鎮痛剤の服用が自閉症リスクを高めると主張した(REUTERS/AFLO)

 「科学リテラシーとは、単に科学知識を持つことではなく、『科学的に考える力』のこと。自然科学を学んだ人だけが持つべきものではなく、誰にでも必要な力だ。ところが現実には、科学的エビデンスが乏しい情報であっても、それを真実として信じてしまう人が少なくない」

 石浦氏はそう指摘する。

 一度形成した信念は、個人の価値観や経験と結びつき、後から修正するのは困難だ。このような状態では、たとえ科学的な根拠が示されても、それを受け入れられず、科学リテラシーが機能しなくなる。つまり、「科学を理解できない」のではなく「信念が科学的判断を妨げる」状態となるのだ。象徴的な出来事が、25年9月22日に行われたトランプ米大統領の記者会見で起こった。

 「トランプ氏は記者会見で、『妊娠中のアセトアミノフェン(注・解熱鎮痛剤の有効成分として使われる)の使用が自閉症リスクを高める』と述べた。これは科学的な裏付けが乏しい情報だったが、『真実』として受け取った人が一定数存在した」(石浦氏)

 トランプ氏は、「私の考えでは」としながらも服用しないよう強いメッセージを発信した。影響力の大きい人物の断定的な言葉は、人々の不安や信念に結びつきやすく、科学的なエビデンスよりも優先されてしまうことがある。もちろん、人々には思想・信条の自由がある。だが、メッセージを受け取る我々は、発信力や影響力の強さを〝根拠〟と誤解して情報を素直に受け入れてしてしまう危険性についても、認識しておかなければならない。


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