2026年1月15日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年1月15日

 フィナンシャル・タイムズ紙欧州エディターのベン・ホールが、欧州連合(EU)は昨年12月18・19日の首脳会議においてウクライナ支援を決定しウクライナへのコミットメントを示したが、ロシアの凍結資産を原資とする「賠償ローン」の実現にひるみ失敗したことに、失望を表明する一文を書いている。要旨は次の通り。

(Diy13/gettyimages)

 「モスクワに対する明白なシグナル」だとドイツのメルツは12月19日未明にウクライナに900億ユーロを提供するEUの決定を評した。

 EU予算を裏付けとして市場で共通債券を発行して調達される資金をローンに当てることになるが、このローンは新たな国際通貨基金(IMF)の支援を実現させ、この先2年間のウクライナの財政を確かなものとする。ウクライナが海外から兵器を購入し国内の兵器製造を拡大することを可能とし、ウクライナの防衛を下支えするであろう。

 それは、ロシアの侵略とのウクライナの戦いに対する欧州のコミットメントを実証するものである。欧州が何としても決意を示す必要がある時にあって資金を見つけられないとなれば、欧州の弱さの酷い告発となったであろう。

 しかし、その決定に至った有様は明白なメッセージを送るものでは到底なかった。EU首脳会議における16時間を超える交渉と数週間におよぶ支援の態様を巡る不明瞭な言動のあげく、EU首脳は900億ユーロの「賠償ローン」のためにロシアの凍結資産を使う計画を反故にした。

 「賠償ローン」のスキームは結局あまりに問題が多くあまりに複雑だと見做された。ベルギーの執拗な反対に当面した。また、イタリアとフランスの気乗りのしない支持や、小さなベルギーがスキームを引っ張るドイツに圧倒される様を見て沈黙した中小の加盟国によって「賠償ローン」は潰された。

 この結末はメルツにとって挫折である。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長にとっても気まずいものである。彼女は他に許容できる選択肢はないと論じ、凍結資産を使ったスキームが巧く働くよう数カ月間努力を傾注して来た。しかし、結局土壇場で他の選択肢が実現することになった。

 メルツとフォン・デア・ライエンは新たなローンのスキームにおいてもロシアの凍結資産に対するEUのグリップは維持されると論ずるであろう。ロシアの資産は今や無期限に凍結されることになった。6カ月毎の更新は要しないことになった。


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