2026年1月15日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年1月15日

 ともあれ、EUは12月11日にロシア資産を無期限に凍結することを決定したことにより、少なくとも、これをトランプ政権に横取りされる危険は防いだことになるであろう。

大きな魚を逃したEU

 EU首脳にはウクライナに対する資金援助を決定しない選択肢はなかった。結局、EU予算を裏付けとして市場で共通債券を発行して90億ユーロを調達し、ウクライナへの無利子のローンに当てることに決した。

 これは手慣れた手法であるが、コストがかかる。起債に伴う利子はEU(究極的には加盟国)が負担することになるが、年間30億ユーロになるとの報道がある。ロシアが賠償するまでウクライナは返済の必要がないとされているが、ロシアが賠償に応ずるはずはなく、だとすれば、いずれ償還せざるを得ないであろうが、共通債券は借り換えを継続せねばならない。

 このローンには条件が付くようである。一つは腐敗防止である。ウクライナに腐敗防止に逆行するようなことがあれば、ローンは停止される。もう一つは「Made in Europe」の基準で、欧州で調達ができない場合は別として兵器の調達は欧州に限定される。

 このローンは、ウクライナ支援に反対するハンガリー、スロバキア、チェコが参加しないと決めたことによって可能となった。それはEU条約20条に規定される「強化された協力(Enhanced Cooperation)」の仕組みに基づくもので、最低9カ国の参加による特定分野での協力の推進を可能にするものである。

 参加しない加盟国は局外に立ち何らの義務も負わない。これをEUの順応性として積極的に評価すべきかどうかは判断が難しい。

 ウクライナが是が非でも財政支援を必要とし、財政破綻ひいては降伏を強いられかねない状況にある時に当たり、EUが支援を決定したことは正当に評価すべきであろう。しかし、「賠償ローン」という大きな手を打つことに失敗した。

 プーチンは脅しが利いたと考えるであろう。足を引っ張ったマクロンの行動は、戦略的自律という彼の一枚看板を裏切るものである。EUは、大きな魚を逃がした。

空爆と制裁▶Amazon
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る