米国防総省が公開した短い動画の一場面。軍艦からミサイルが発射される様子とみられる
アメリカのドナルド・トランプ大統領は25日、米軍がナイジェリア北西部にある武装組織「イスラム国(IS)」の拠点に対して、「強力かつ致命的な攻撃」を実施したと発表した。
トランプ氏はISは「テロリストのくず」だとし、同組織が「主に罪のないキリスト教徒を標的にし、悪意を持って殺害している」と非難。米軍が「多数の完璧な攻撃を実行した」とトランプ氏は説明した。
ピート・ヘグセス米国防長官は、「ナイジェリア政府の支援と協力に感謝する。メリークリスマス!」とXに投稿した。
米軍アフリカ司令部は後に、今回の攻撃はナイジェリア・ソコト州で、ナイジェリアと連携して実施されたと発表した。
ナイジェリアのユスフ・マイタマ・トゥガー外相はBBCに対し、「共同作戦」を行ったと述べた。「テロリスト」を狙ったもので、「特定の宗教とは無関係」だとした。
トゥガー外相は追加の攻撃について、「両国の指導部の決定」次第だとして可能性を排除しなかった。
ナイジェリア外務省は26日朝、声明を出し、同国当局が「テロリストや暴力的な過激主義による持続的な脅威に対処するため、アメリカなど国際的パートナーとの組織的な安全保障協力に引き続き取り組んでいる」と説明。
「これにより、ナイジェリア国内のテロリストへの精密攻撃が実現した。北西部において空爆を実施した」とした。
米国防総省はその後、機密扱いではない短い動画を公開。軍艦からミサイルが発射される様子とみられるものが映っている。
トランプ氏は11月、イスラム武装組織に対処するため、ナイジェリアでの軍事行動に備えるよう米軍に命じていた。
トランプ氏は25日夜、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、「私のリーダーシップの下、我が国は急進的イスラム・テロリズムが繁栄することを許さない」と述べた。
11月に警告を発した際には、トランプ氏は具体的にどの殺害事件を指しているのか明言していなかった。ただ、ここ数カ月の間、アメリカの一部の右派の間では、ナイジェリアのキリスト教徒に対してジェノサイド(集団虐殺)が行われているとの主張が広まっていた。
暴力行為を監視する複数の団体は、ナイジェリアでイスラム教徒よりもキリスト教徒が多く殺害されていることを示す証拠はないとしている。同国の人口は、キリスト教徒とイスラム教徒がほぼ半数ずつを占めている。
ナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領の顧問は当時、ジハード(聖戦)主義組織に対する軍事行動を共同で行うべきだと、BBCに述べていた。
ダニエル・ブワラ大統領顧問は、イスラム主義反乱勢力に対処する上で、アメリカの支援を歓迎するとしつつ、ナイジェリアは「主権」国家だと述べた。
また、聖戦主義者は特定の宗教の信者を標的にしているのではなく、あらゆる信仰を持つ人や無宗教の人をも殺害していると、ブワラ氏は述べた。
ティヌブ大統領は、自国には宗教的寛容が存在すると主張。安全保障上の課題は「宗教や地域を超えて」人々に影響を与えているとした。
トランプ氏は先に、ナイジェリアを「特に懸念のある国」に指定したと発表。その理由として、キリスト教徒が「存亡の危機」にさらされていることを挙げた。トランプ氏は「数千人」が殺されたとしたが、証拠は示さなかった。
米国務省による「特に懸念のある国」への指定は、「宗教の自由を深刻に侵害している」国への制裁を可能にするもの。
この発表を受け、ティヌブ大統領は、ナイジェリア政府がアメリカや国際社会と連携し、あらゆる信仰を持つコミュニティーの保護に努めると表明した。
ボコ・ハラムやイスラム国西アフリカ州(ISWAP)などの聖戦主義組織は、10年以上にわたりナイジェリア北東部で大惨事を引き起こし、数千人を殺害してきた。世界の政治的暴力を分析するアメリカの非営利調査団体ACLED によると、犠牲者の大半はイスラム教徒だという。
ナイジェリア中部では、水や牧草地をめぐり、主にイスラム教徒の遊牧民と、キリスト教徒であることが多い農耕民との衝突が頻発している。
報復の連鎖による犠牲者も数千人に上っている。残虐行為は、双方が行っている。
複数の人権団体は、キリスト教徒が特に標的にされていることを示す証拠はないとしている。
こうした中、アメリカは先週、米軍がシリアで「大規模な空爆」を実施したと発表した。
アメリカ中央軍(CENTCOM)は、戦闘機や攻撃用ヘリ、砲兵部隊が「シリア中部の複数地点にある70以上の標的を攻撃した」と明らかにした。ヨルダンからの航空機も攻撃に参加した。
(英語記事 US launches 'powerful strikes' against Islamic State in Nigeria, says Trump)
