ゼレンスキー大統領(左)は大統領府でキリロ・ブダノフ氏(右)と会談した写真を公開した(2日、キーウ)
ヤロスラフ・ルキフ記者、ヴィタリー・シェフチェンコBBCモニタリング・ロシア編集長
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2日、諜報機関トップのキリロ・ブダノフ氏を新しい大統領府長官に任命した。同職をめぐっては、前任のアンドリー・イェルマーク氏が昨年11月、汚職をめぐる騒動の中で辞任したばかり。ゼレンスキー氏はまた、デニス・シュミハリ国防相を解任し、後任に第1副首相兼デジタル転換相のミハイロ・フェドロフ氏を任命すると述べた。
ゼレンスキー氏はソーシャルメディアへの投稿で、「現在のウクライナは安全保障問題に大きく集中する必要がある」と説明。ブダノフ氏とキーウで会談している写真を公開した。
39歳のブダノフ氏はこれまで、ウクライナ国防省情報総局(GUR)を率いていた。同機関は、ロシアに対する攻撃で複数の高い効果を上げたと主張している。
ゼレンスキー氏は2日のソーシャルメディアへの投稿で、「現在のウクライナは、安全保障問題、防衛・安全保障部隊の発展、さらに外交交渉の路線に、より大きく集中する必要がある」と記し、「キリロ(・ブダノフ氏)はこれらの分野で専門的な経験を持ち、成果を出すために十分な力を備えている」と述べた。
そのうえで、新しい大統領府長官に対し、ウクライナ防衛の「戦略的基盤」に関する主要文書を更新し、提示するようすでに指示したと述べた。
ウクライナの大統領府長官は、歴史的にも非常に強力な地位にあたる。2000年代には、大統領自身とほぼ同じ権力を持っていた時期もあった。
表向きは行政職だが、大統領に非常に近いだけでなく、様々な形で政府を裏で動かすことができる。
例えば、大統領府長官は政府人事を大統領に働きかけたり、ビジネス界に圧力をかけたりすることができる。その結果、しばしば個人的な利益を得ることもある。
ブダノフ氏の任命は、この役職を刷新しようという意思をうかがわせる決定となった。これにより大統領府は戦時態勢に入り、ロシアとの戦争と安全保障にはるかに重点を置くことになる可能性が高い。
前任のイェルマーク氏(54)は、ロシアの全面侵攻が2022年に始まって以降、大統領府長官として強大な政治的影響力を行使していた。また、戦争の終結を目指すアメリカとの重要な協議で、ウクライナの交渉チームを率いていた。
ゼレンスキー氏はこの日、側近チームのその他の人事変更も発表した。国防相の交代については、防衛省の構造変更を決めたからだと説明した。
34歳で新国防相になるフェドロフ氏は、ウクライナの閣僚として最年少。これまでの主要な成果は、政府サービスのための集中型デジタルプラットフォーム「DIYA」の開発と導入だった。
ゼレンスキー氏は2日夕の演説で、フェドロフ氏が「ドローンに深く関わっている」とし、特にドローン操縦者の育成を任務とすると述べた。
一方、前任のシュミハリ氏は引き続き「チームの一員」で、別の作業分野に異動すると付け加えた。
また、ブダノフ氏の後任として、対外情報庁トップのオレグ・イワシチェンコ氏(56)をGUR長官に起用すると述べた。
ウクライナを悩ませる汚職
イェルマーク氏は11月28日、キーウの自宅が国家の反汚職機関によって捜索された直後に辞任した。このことは、ゼレンスキー氏にとって大きな打撃になるとみなされた。
イェルマーク氏は不正行為の疑いをかけられておらず、ウクライナの国家汚職対策局(NABU)と特別汚職対策検察庁(SAP)は、同氏の自宅を家宅捜索した理由を明らかにしていない。
反汚職当局は先に、原子力発電公社「エネルホアトム」などのエネルギー部門で約1億ドル(約155億円)規模の横領計画を指揮したとして、数人を摘発。複数の主要閣僚、政府関係者らが、ロシアの攻撃からエネルギーインフラを防御する建設工事で、業者から支払いを受けた疑いがもたれている。
この汚職スキャンダルはウクライナを揺るがし、ゼレンスキー氏自身の立場を弱め、難しい時期における同国の交渉力を危うくしている。
ウクライナは欧州の同盟国の支援を受け、当初ロシア寄りと見られていたアメリカ主導の和平案の条件を変更しようとしている。
一方、ロシア当局はこのスキャンダルを利用し、ウクライナの汚職疑惑を強調している。
(英語記事 Zelensky names spy chief to head presidential office after corruption row)
