2026年1月4日(日)

BBC News

2026年1月3日

就任式で数千人の歓声に包まれたマムダニ氏は「幅広く、かつ大胆に統治する」と誓った(1日、ニューヨーク)

マデリン・ハルパート記者

2026年最初のこごえる冬の日、数千人のニューヨーク市民と進歩的な民主党の支持者らに囲まれ、新たにニューヨーク市長に就任したゾーラン・マムダニ氏は「私たちの街の新しい物語」を語っていくと誓った。

マムダニ氏は就任演説で、「市当局は安全性、手頃な物価、そして豊かさのための政策を実現する。市の政府は、それが代表する人々と同じ姿、同じ生活を送るものになる」と、集まった人々に語った。

このメッセージは、昨年11月にこの34歳の民主社会主義者を勝利へと押し上げたものと同じだ。昨年6月の民主党予備選の前は、まさか彼が次の市長になるなど予想されていなかった。

アメリカで最も物価の高い街を率いるためにマムダニ氏が掲げた公約には、無料の保育サービス、無料の公共バス、市が運営する食料品店といった大きな変革が含まれていた。

しかし、市長としてこれらの約束を実現していくには、途中でいくつもの課題に直面する可能性が高く、職務開始からすぐさま、市政に深くかかわる利害関係者たちを味方につけ続ける必要がある。

ニューヨーク大学のパトリック・イーガン教授(政治・公共政策学)は、「こうしたことを達成するために、彼は自分の政治的な力やその他の力をすべて注ぎ込むだろう」と述べる一方、「ニューヨーク市は大きく、複雑な場所だ。なので、彼が言うことが実現するかは、まったく予断を許さない」と語った。

1. 公約実現の予算を確保する

高い理想を掲げたマムダニ氏の政策綱領は、生活費の問題に焦点を当てている。これには、自治体が家賃値上げ率の上限を設定している「レント・スタビライズド(家賃安定型)物件」の一部で家賃値上げを凍結することや、無償の保育サービスの提供などが含まれている。

政府関係者によると、マムダニ氏は一部の政策目標を自らの判断で、かつ大きな費用をかけずに達成できるという。例えば、家賃安定型物件の家賃を凍結したい場合、市の家賃統制委員会にこの方針に沿った人物を任命することができる。

しかし、州と市が予算不足に直面する中で、他の目標を実現するための資金を確保することは複雑になると、政府関係者は述べている。

「無料のバスサービスや無償の保育を提供したいのなら、こうしたことには費用がかかる」と、米コロンビア大学のロバート・シャピロ教授(国際・公共政策学)は指摘する。「彼がやりたいことにとって最大の障害は、ニューヨーク州そのもの、同州の財政力、そして州知事の政治的な意思だ」。

マムダニ氏は、一部の資金を新しい税収から得ると述べている。同氏は、富裕層への課税によって最大90億ドル(約1兆4000億円)を調達できると考えている。また、法人税率を7.25%から11.5%に引き上げると公約している。

しかし、税制変更には州政府の支持が必要だ。

州知事のキャシー・ホークル氏(民主党)は、マムダニ氏よりは穏健派だ。そのホークル知事は昨年の選挙戦でマムダニ氏を支持し、いくつかの生活費対策にも賛同した。しかし、今年秋に再選を目指す中で自身の政治的打算を進めるホークル氏はすでに、マムダニ氏の幅広い税制計画を支持しない可能性を示している。

2. ホワイトハウスからの介入を回避する

ニューヨーク市長選挙に向けた数週間、ドナルド・トランプ米大統領はソーシャルメディアや記者会見で、民主党の新星となったマムダニ氏を、アメリカ最大の都市の未来を脅かす「共産主義者」の市長だと攻撃した。

また、マムダニ氏が当選した場合、連邦政府からの数十億ドルの補助金を撤回するとも警告した。

しかし、昨年11月に行われた次期市長と大統領の初会談は、予想以上に友好的なものだった。両者は頻繁に笑顔を交わし、互いに称賛し合い、トランプ氏はマムダニ氏に「非常に良い仕事ができると確信している」と語った。

それでもマムダニ氏が就任した今、2人の正反対の政策指針が対立を生む可能性はある。たとえば、移民問題が緊張の火種となるかもしれない。

現時点ではニューヨークは、トランプ氏が移民政策への抗議デモへの対応としてアメリカ各地の民主党主導の都市で行っている、州兵派遣の対象にはなっていない。

しかし、トランプ政権は複数都市での取り締まりの一環として、ニューヨークでも移民摘発を強化した。

一方、マムダニ氏は11月の勝利演説で、ニューヨークは「移民の都市であり、移民によって築かれ、移民によって支えられ、そして移民によって率いられる都市であり続ける」と誓った。

3. ビジネス界のリーダーたちを巻き込む

昨年6月の民主党予備選でマムダニ氏が同党のニューヨーク市長候補になったことで、金融街ウォール街に激震が走り、財界リーダーたちは慌てに慌てた。

一部のビジネスリーダーは、マムダニ氏が市長になるならニューヨークから出ていくと脅した。舞台裏で数百万ドルを費やし、他の市長候補への支持をまとめようとする財界有力者たちもいた。

しかし、マムダニ氏が市長レースの最有力候補であり続けると、経済界の態度は変わり始めた。そしてマムダニ氏は、自分に対立する財界関係者に接触し、何が心配なのかを尋ねていった。

マムダニ氏は、金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOを含むリーダーたちと会うと約束。ダイモン氏は後に、マムダニ氏が当選すれば支援すると発言した。

マムダニ氏はこのほか、不動産開発業者ジェフリー・グラル氏とも面会。グラル氏はその後、マムダニ氏は「親しみやすく」、「頭がいい」と評した。

それでも、グラル氏やビジネス界の一部はいまだに、34歳のマムダニ氏にはアメリカ最大の都市を率いるだけの経験が欠けていると懸念し、企業や富裕層への増税計画が、そうした企業や富裕層の一部をニューヨークから追い出すだろうと主張し続けている。

前出のイーガン氏は、マムダニ氏が推進する政策目標は、大企業や富裕層の目標と思想的に相いれないと指摘。それだけに今後、市長と財界リーダーたちとの「協力の精神」が維持されるかどうかはまだ分からないとも、イーガン氏は話した。

「ニューヨーク市の市長は誰だろうと必ず、財界リーダーたちの協力を必要とする。特に、金融と不動産が大きな役割を果たすここニューヨーク市では、その分野の有力者たちの協力が必要だ」

4. 市民の安全に取り組む

マムダニ氏は市長として、ニューヨーク市のトップにとって永遠の課題である犯罪対策と市民の安全確保にも取り組むことになる。

多くの大都市と同様、ニューヨークでは新型コロナウイルスのパンデミック中に犯罪が増加したが、2025年には殺人と銃撃の発生率が過去最低に近い水準まで下がった。

そのため新市長は、社会福祉サービスや支援を含む、ニューヨークの公共の安全について「創造的に考える余地」を得たと、イーガン氏は指摘している。

マムダニ氏は、メンタルヘルス(こころの健康)事業や危機対応に投資すると公約。「地域安全保障局」を設立し、行政側から率先して市民に声をかける福祉職員を市内の地下鉄駅に配置すると約束している。

前任のエリック・アダムズ前市長の下でも、市は地下鉄駅にこうした福祉職員を派遣し、住宅やメンタルヘルスのプログラムを設けた。しかし、一部の専門家や地域リーダーは、こうした取り組みがホームレス問題やメンタルヘルスの危機に十分対応できなかったと指摘している。

民主党の政治戦略の専門家で、マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長の顧問を務めたハワード・ウルフソン氏は、マムダニ市政の警察運営と、万引きや生活の質に関わる犯罪にどう対応するかを、何より重視して新市長を判断すると話した。

マムダニ氏は、アダムズ市政でニューヨーク市警本部長を務めたジェシカ・ティッシュ氏に留任を求めた。この決定は、一部のビジネスリーダーや市民の支持を得た。

「公共の安全は、成功か失敗かの前提条件だ」とウルフソン氏はかつてBBCに話した。「ここは安全だと感じられるなら、人はそれ以外のさまざまな問題を許容できる。しかし、安全だと思えないなら、許容できる問題などほとんどない」。

(英語記事 Four challenges facing New York City Mayor Mamdani

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cwy14446yqgo


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