家庭用供給には新規参入者が続々
2年後に家庭用も自由化される見通しとなったことから、新規事業者が続々と名乗りを上げている。経産省の特定規模電気事業者のリストには6月30日現在で270社の新電力が登録されている。7月1日から既に自由化されている高圧の需要家向けに電力供給を開始することを発表したソフトバンク系列のSBパワーの名前もある。
登録企業のなかには、日産自動車、三井物産、大和ハウスなどの大企業の名前もあるが、本社の住所の記載があるだけで、電話番号もホームページの記載もない企業も目立つ。ざっと見たところ、半分以上の企業は住所の記載しかなく、とりあえず登録を行っているだけのようだ。
ワタミエコロジーのように再生可能エネルギーによる電気の販売を示唆する名前を付けている企業も多くある。また、楽天エナジーは、省エネ設備の導入などによりエネルギーコストを下げる一方、宿泊設備には無料の広告などを行うとし、楽天の他のサービスとの組み合わせの提案を行っている。家庭用が自由化されれば、ソフトバンク、ワタミなども既存のサービスと組み合わせ新規の顧客獲得に乗り出すことになるのだろう。
需要家にとって選択肢が増えるのは良いことだ。例えば、再生可能エネルギーで作られた電気を使いたいという需要家は満足感を得られることになる。しかし、大部分の需要家にとっては、やはり価格が供給会社選択のカギだろう。電気料金は下がるのだろうか。NTTに独占されていた電話の料金が自由化により下がったことから、電気料金も自由化により下がるとの解説もある。本当だろうか。
電話と電気の違い
技術進歩と投資の意思決定
通信の技術進歩は著しい。20年前にはネットをするには通常電話回線を利用するしかなかった。欧州の古いホテルなどでは電話線が壁に直結されており、ネットをすることは不可能だった。20年前、携帯電話を持っている人はまれだった。また、電話機も大きくとてもポケットに入れられる大きさでも重さでもなかった。
電話料金が下がったのは、競争に加え、技術が飛躍的に進んだことが大きいだろう。制度の変更より技術進歩が寄与した面が大きいかもしれない。電気でも技術進歩はある。しかし、燃料を燃やして蒸気を作りタービンを回し発電する、あるいは水を高所から落としタービンを回し発電する基本原理は変わらない。火力発電用ボイラーの効率は少しずつ良くなっているが、電話回線が光に変わり、通信速度が数百倍変わったような劇的な変化はない。