世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月22日

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 しかし、この論説も指摘しているように、そのためには主として石炭火力発電を制限することになり、石炭産出州の議員から反対があります。特に、ルイジアナ州のように、大きな石炭産業を擁し、また、民主党上院議員の席の確保が危ぶまれている州では、オバマの決定に対して危惧の念が表明されているとのことです。これに対して、オバマは党内の反対よりも環境主義を優先させています。オバマの議会に対する根回し不足は、シリア問題を始めとして、タリバンとの捕虜交換問題などにも顕著に表れています。

 また、それは、今やオバマの政治的信念とも言えます。それは、1月28日の一般教書演説で、「大統領権限で議会をバイパスして米国民の機会と可能性を広げられる場合は、いつでもそれを行使する」と述べているところからも明らかです。オバマは、民主、共和を問わず、議会の支持を得ることには絶望して、行政権力で出来ることをしようと心に決めているようです。今回の提案について言えば、米国では、環境保護局(EPA)が大気浄化法に基づく強い規制権限を持っていますが、オバマは、議会による立法措置ではなく、この権限をフル活用しようとしています。

 今後のオバマ政権の動向には、危惧を抱かざるを得ません。それは、オバマが大統領権限により大きく依存することに加えて、オバマの政治信念の中にある、学生時代以来抱いてきた極めて強いリベラル思想が噴出し始めているからです。今回のCO2削減の提案は、単に気候変動対策にとどまらず、それを象徴する出来事と言えます。

 第一次オバマ政権は、ジム・ジョーンズ安保補佐官、クリントン国務長官、ゲーツ国防長官などによって、現実主義路線が保障されていましたが、それらの人々は漸次政権を離れ、第二次オバマ政権になって、現実主義者の歯止めが無くなっている感があります。

 もちろん、まだ将来について断定することはできません。デタント一辺倒だったカーター政権が、ソ連のアフガン侵攻以後180度政策を変えた例もあります。中国の挑発的傾向が、何らかの機会に、オバマ政権の方向に影響を与える可能性はまだ残っているかもしれません。

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