イランの今を知る
傷ついた世界の歩き方 イラン縦断記 フランソワ=アンリ・デゼラブル(著)、森晶羽(訳)白水社 2970円(税込)
『世界の使い方』を若い頃に読んで影響を受けたフランス人作家(1987年生まれ)が、コロナ禍後のイランを旅する。至る所に当局の監視があるため、出会った人たちとも自由な会話ができない。それでも中には「ヒジャブ」の着用が不適切として逮捕された女性が死亡したことへの抗議運動のスローガンである「女性、命、自由」を叫ぶ人もいる。ただ、体制批判をする人ばかりではない。ヒッチハイクで乗せてくれた男性は体制支持者だったが、意見の違う娘に手を焼いていた。確かに息苦しい、こんな社会は嫌だと思う。それでも、同じ人間。著者の視点はそこからぶれない。
現在に至るイランの系譜
イラン現代史 イスラーム革命から核問題、 対イスラエル戦争まで 黒田賢治 中公新書 1155円(税込)
1979年のイスラム革命後、親米だった前王権時代からホメイニ師を中心に反米へと進んだイラン。その現代史をたどると、西欧の西側諸国との関係を維持しつつ国際秩序に従う意向を見せたバニーサドル大統領、西洋哲学を修め「文明の対話」を提唱したハータミー大統領など、反米一辺倒ではなかったことがわかる。権威主義的な部分もあるが、政権の個性はあふれ、民意によるデモもある。本書では、イラン政治の強権的ではない、多様な一面を見ることができる。
知られざるイスラム報道の世界
イスラム報道 増補版 ニュースはいかにつくられるか
エドワード・W・サイード(著)、浅井信雄(訳)、佐藤成文(訳)、岡真理(訳)みすず書房 4400円(税込)
日本にとってもイスラムの世界が縁遠い話ではないことは、昨今の世界情勢からも明らかだ。本書では、イスラムに関する報道が西洋(米国)でどのように形成されてきたかを緻密に分析する。しかし、その多くは米国側の視点に基づくものであり、必ずしもイスラム側の世界を正確に映し出しているとは言い切れない。私たちが持つ「イスラム」のイメージは、主に米国から流入した情報によって作り上げられているという事実を知ることは大切だ。
