2024年4月29日(月)

科学で斬るスポーツ

2014年7月28日

世界は日本を上回る勢いで成長している

対日本戦で4点目を決めたハメス・ロドリゲス。得点王にも輝いた(写真:新華社/アフロ)

 最終戦のコロンビア戦は、日本の意地を見せ、動きはよかった。しかし、先制のPKを与えたファウルはいただけない。上位チームのディフェンスは、ファウルを取られないようにタックルを工夫している。ドイツ、アルゼンチン、オランダなど上位チームのディフェンスを研究することが重要だ。それに全試合で得点を決め、得点王に輝いたMFハメス・ロドリゲスの突破力もすごい。ぐいぐいペナルティーエリアに入りこむ、フィジカルの強さ、技を見習いたい。

 予選リーグ敗退という憂き目を見た日本。だが、一進一退を繰り返しながらも着実に実力を挙げていることは間違いない。歯車はほんのちょっとした力で逆に回ってしまった。

 香川真司、本田、長友ら欧州の名門クラブに入り、アジアでは頭ひとつ抜けた状態という認識を持つことは正しい。しかし、世界は日本を上回る勢いで成長していることも忘れてはならない。名門クラブで香川、本田らは、中心選手にはなりきれていない。それなのに日本は、二人にパスを集めざるを得なかった。世界のクラブで中心選手になるような選手を出すには、国内リーグも含めすそ野を広げていかなくてはならない。そのためにも、科学的な視点から前向きな課題を設定し、克服していくことだ。

 最後に、日本のやるべきことをいくつかの課題を挙げて、まとめにしたい。

自主的判断が苦手な日本人

 一つ目は、代表のプレーに対する意識の共有に時間をかけることだ

 今大会期間中、日本は選手ミーティングを一度もやらなかったという。これでよかったのか。初の8強入りしたコロンビア、ドイツなどは育成段階から同じメンバーで戦い、同じ意識を持っていた。仲間のよいところ、悪いところを含め熟知している。それがチーム全体の組織力になっている。

 代表招集されてから意識を共有していては時間が足りない。育成段階から目指すサッカーの共有、それがかなわない場合のコミュニケーションの在り方をしっかり考えなくてはいけない。その意味で、言語的なコミュニケーションを学ばせる育成メニュー、代表選手間での情報交換ツールなどがあってもいい。

 今から10年ほど前、NHKの番組で、ラグビー日本代表の平尾誠二監督(当時)が「日本は、(サッカー、ラグビーのような)集団で行う球技に弱い」と語っていた。こうした状況が目まぐるしく変わり、次の展開が読めない集団競技では、「選手個々のその場での自主的判断と全体としてゲームメークの一致が必要になってくる。しかし、日本人は、こうした先の読めない状況での自主的判断が苦手で、チーム全体として的確な動きが得られない」という。つまり、先ほども触れたが、正解は一つ、答えを教えられて覚えるという日本の教育にも問題はあるだろう。答えが何かわからない、多くの選択肢の中から瞬時に自分で考え、判断を下す。その判断をした理由を明確に説明できる、その説明を共有する教育、場、時間が必要だということだろう。積み重ねていくしかない。


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