メンタルトレーニングの重要性
二つ目は、日本の真面目さを意識したメンタルトレーニングの重要性を認識することだ。
オシム氏は日本人の特性として「真面目、豊富な運動量、スピード、俊敏性、プレーに対する責任」を挙げた。この中で、真面目さ、プレーに対する責任は、諸刃の剣になることを共有したい。
代表選手は、国の期待を背負い、国のために勝ちたいという意識が極めて強い。しかし、この真面目さは、ここぞというときに「筋肉の硬直」を生んでしまう。絶好機にシュートが決まらない決定力不足の一つの要因になっている。ギリシャ戦で、FW大久保嘉人のシュートの失敗もその典型例であろう。
「スポーツ関係者の中には、メンタル訓練は単に気分を引き上げる手段と考える人が多い。筋力、技術訓練と同じく練習を積み重ねて初めて効果があがる。ソチ五輪で、浅田真央選手が、失敗した原因は『完璧主義』。ここ一番の時、強い心が逆に筋肉の過剰な緊張をもたらす」とソウル五輪シンクロナイズドスイミング銅メダリストで、メンタルトレーニング上級指導士の田中ウルヴェ京さんは朝日新聞に書いている。
田中さんの指導の目標は「ここ一番」の時、何も考えないあっけらかんとした状態になれるようにすること。少なくとも1年前から「ストレスフルな状況で自分という人間は何を考え、何を感じる傾向にあるのか」を徹底的に認識する訓練を続けるという。マイナス思考になりきる練習をすることもある。異常に深く考えることで自分自身を把握するのだ。目の前の事実が直接ストレスを生じさせるのではなく、「その事実を自分がどう捉えるか」によって不安の種があることを気付かせることが大事という。
三つ目は、日本の強みを生かした身体づくり。
日本選手の特性は持久力といわれるが、果たしてそうなのか。今回の大会を見る限り、そうは見えなかった。本当に持久力が高いのかどうかは、じっくり検証していくことが必要だろう。そして、試合に必要な身体能力とは何か、科学的なデータをもとに再考していくことも重要だ。例えば、絶対水平感覚強化と体幹強化を同時に行うトレーニング法の構築。距離だけでなく、高強度を持続する選手の育成などだ。これは代表からでは遅い。育成段階からの長期的な戦略を立てなければならないだろう。