日本のポゼッションは向上した
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立教大学の安松幹展教授がまとめた面白いデータがある。南ア大会で、各国選手の1人当たりのボールをポゼッションした時、非ポゼッション時の平均走行距離(80分以上出場した選手)をランキングした。図3はボールポゼッション時の走行距離で、トップは優勝したスペイン。日本は32チーム中下から2番目。図4は非ポゼッション時の走行距離だが、日本は上から4番目。日本選手が試合中に走った走行距離は10kmちょっとでほぼ平均であったことを考えると、走行距離のほとんどが、相手にボールを奪われているとき、つまり守備時だった。
ブラジル大会では、この反省を踏まえ、パスでつなぐサッカーを実践したこともあり、ポゼッション時の走行距離は伸びたが、安松教授は「走行距離など数字を見ると、今回は前回より劣っているわけではないが、相手選手の速さ、強さはさらにその上を言っていた」と語る。安松教授によれば、ドイツなど上位の国には、移動距離、高強度の運動(時速20km前後の高速移動)の割合がともにずば抜けた選手がいるが、日本にはどちらか一方だけが得意という選手しかいない。双方を兼ね備えているのは、あえて言えば、長友佑都くらいだ。ポゼッション、走り、高強度運動すべてで日本はコートジボワールに劣った。
体の強さと絶対水平感覚
コートジボワールの選手と日本選手の違いは、高い身体能力とムキムキの体だけでない。関西大学の小田伸午教授、九州共立大の木寺英史教授らは力の使い方の感覚という点に注目している。「どんな状況下でもアフリカの選手は絶対的な水平感覚をもっていて、力の入れ方、抜き方を知っている。体に余裕が生まれ、相手の強いあたりにも負けないで、倒れない」と小寺教授は強調する。
水平感覚とは、どんなに相手に倒されようとされても、頭を傾けないこと。どんな姿勢でも、目のラインが地面に水平になっていることから「絶対水平感覚」といわれる。これによって体幹のラインがしっかり地面と垂直になるだけでなく、視野が広がり、状況を把握する「観の目」(全体を見渡す目)を得ることにつながる。
100mの世界記録を持つウサイン・ボルト選手は、200mのコーナーでこの絶対水平感覚を保ち、コーナーでも減速しない。しっかり地面を蹴っている。大リーグの田中将大もこの水平感覚を持っているのでコントロールはよい。