隣国のリアル
DP DOG’s DAY キム・ボトン(著)、 廣岡孝弥(訳) 太田出版 5500円(税込)
「DP」とは「Deserter Pursuit」の略で「脱走兵の追跡」という意味だ。主人公のアン・ジュノは、韓国陸軍憲兵隊員として、兵役中の脱走兵を追跡する。ジュノはその仕事に満足しているわけではなく、むしろ「軍の犬」と自虐する。2021年にはNetflixでドラマ化された。「国防」という大義のもと、上官による部下へのいじめが行われ、見過ごされる。脱走は犯罪だが、その一人ひとりは、誰かの息子、兄弟、恋人なのだ。それはジュノも同じ。なのに偶然、追い、追われる立場になる。国防、軍隊、徴兵、机上ではなく、お隣韓国の人々は現実に向き合っていることを改めて思い知らされる。
日本橋の今昔物語
趣都 山口 晃 講談社 1980円(税込)
日本を代表する画家・山口晃による漫画。画家のしわぶき先生が仲間を連れて日本橋界隈をめぐる。しかし、その様子はちょっと変わっている。どころか、こんな場所であれば行ってみたいと思えてくる。長細い路面電車、ロープウエーで行く三越、日本橋・首都高をまたぐ、たいこ橋……。古さと新しさが同居している。2040年までに、日本橋の上を走る首都高はなくなるそうだが、歴史の連続を考えたとき、それが本当に正しいのかと考えさせられる。
菌が見える学生の農大生活
新装版 もやしもん 石川雅之 講談社 869円(税込)
種麹屋の息子である主人公・沢木惣右衛門直保。その周りを浮遊する、愛らしく描かれる「四角い口のキャラクター」は菌であり、沢木は肉眼で菌が見えるという特殊能力を持つ。農大の発酵蔵を舞台にした学生生活では、沢木が菌と会話して問題の解決につながることも。アザラシの腹に海鳥を詰め、土に埋めて発酵させる「キビヤック」が登場したり、日本酒やワインの発酵について詳細な解説が行われたりと、まるで専門書のようだ。
