2026年6月12日(金)

【解剖】中国の対日情報戦略―台湾・FactLinkレポートを読む

2026年6月12日

 7つ目のカテゴリーは、中国中央テレビ(CCTV)のアカウント「玉淵譚天」によるものである。同アカウントは、外交部アジア局司長の劉勁松が若者風の服装でポケットに手を入れ、外務省アジア・オセアニア局長の金井正彰が頭を下げて見送る映像を公開した。

 この映像は、中国の優位と日本の屈服を象徴する外交的なイメージを伝える。AI技術の発展に伴い、X上でもAIを用いた日本の外交官を嘲笑する政治的なミームが大量に投稿された。

外交的抗議から国連での法廷闘争へ

 中国は、高市氏の「台湾有事発言」に対し、プロパガンダ、経済制裁、外交的警告などを組み合わせた脅威戦略を巧みに展開した。25年11月下旬から26年1月にかけて、中国は国連において、日本が第二次世界大戦後の国際秩序や『国連憲章』に違反しているとの非難を繰り返し提起した。

 中国の国連代表である傅聡氏および副代表の孫磊氏は、高市氏の「台湾有事発言」後、国連安全保障理事会などの場で繰り返し演説し、日本が核保有を公然と主張し、3つの安全保障関連文書を改正し、右翼勢力の支持を得て侵略の歴史を美化していると非難した。

 また、日本のこの行動は、第二次世界大戦後の国際的枠組みを無視した軍国主義の復活の示唆だとし、地域の平和への脅威になっていると主張。高市氏が台湾問題を日本の「存亡の危機」と結びつけたことに対し、中国の内政への不適切な過干渉とし、戦後の国際法に基づく国際秩序および『国連憲章』に背いていると批判した。

 また、中国の国営メディアは25年11月末から12月にかけて、中国国連代表の孫磊氏が25年10月9日に国連で提起した「沖縄の地位未定論」への発言を大々的に報じた。孫磊氏は、この時、第二次世界大戦後の秩序を定めた『カイロ宣言』や『ポツダム宣言』は沖縄について言及していないと主張している。

 さらに、第二次世界大戦後の51年の『サンフランシスコ条約』にも沖縄の日本への返還については言及されておらず、沖縄の主権問題は未解決のままであるとした。さらに、国連がこれまで日本による沖縄の主権を認めていないことも主張した。

 この件からは、中国が国連組織を通じて国連内部の議論を主導し、国際世論を変えようとしていることが見て取れる。その手法は、従来の定義における「情報戦」の枠を超え、「ハイブリッド脅威」の一環として「法律戦」も含んでいる。

 これは、ピューリッツァー賞受賞者であり歴史家のアン・アップルバウムが著書『Autocracy, Inc.: The Dictators Who Want to Run the World(独裁者の同盟)』で示した見解と符合する。ロシアや中国といった独裁国家は、国連などの国際機関に積極的に介入し、国際的な議論の方向性を主導し、世界的な世論環境を再構築しようとしているというものである。


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