2026年6月12日(金)

【解剖】中国の対日情報戦略―台湾・FactLinkレポートを読む

2026年6月12日

情報防衛ライン構築への提言

1. 中国が日本や台湾に対して行う情報・宣伝活動には異なる主管機関が存在するものの、「外交上のレッドラインが踏まれた」と判断した際に中国が発動するプロパガンダキャンペーンや偽情報の方法は、決まったパターンやシナリオに従っている。

2. 中国が外交上のレッドラインを踏まれた際、台湾および日本に対する情報攻撃には、「ダークウェブへのリーク+偽造文書」という手法が見られる。異なる出来事や地域を網羅するこれらの事例は、驚くほど類似した手法が見られるため、さらに深く検証する価値がある。

 ただし、サイバー攻撃の手法には、違いがある。台湾に対して攻撃を仕掛ける際、中国の国営メディアや政治系インフルエンサーのアカウントは、情報拡散の最終段階となって初めて台湾メディアやネット上の噂を取り上げ、ネット上の反響を誇張・増幅させるにとどまっている。これに対し、高市氏の「台湾有事発言」を巡る事案では、中国の政治系インフルエンサーのアカウント、中国と密接な関係にあるファンページ、香港メディアが明らかにプロパガンダキャンペーンに参加していた。

 その理由の一つとして考えられるのは、台湾市民は長年にわたり中国共産党のプロパガンダと戦ってきた経験から、メディアリテラシーが高く、発信源が中国である情報に対して強い警戒心を抱いていることが考えられる。情報操作を行う側はここ数年、台湾に対して中国は「ステルス」的な拡散モデルを採用している。

3. WeiboやXは、中国が外交的対抗措置を講じる主要なプラットフォームであり、「国際世論」と「国内世論」の両方を操作するのに用いられている。これら2大ソーシャルプラットフォームを監視・把握することは、情報戦を分析・観測する上で不可欠である。

 さらに、AI技術の急速な進歩により、悪意ある発信者は異なる言語や多様な状況に合わせたコンテンツを迅速に作成できるようになっただけでなく、短時間でAI生成のショート動画を作成し、ニュースに素早く追随することすらも可能となっている。研究者は今後、Instagram Reels、Youtube Shorts、TikTokなどのプラットフォームにも注目を広げていく必要がある。

4. 政府による事実関係の説明を行い、市民社会、メディア、一般市民が共同で「情報防衛ライン」を構築する必要がある。特に、中国外交にとってレッドラインを越えたとされる事案においては、台湾と日本のメディア、ファクトチェック組織、研究機関、市民団体が相互に交流し、学び合うことで、当該事案を振り返り、対応メカニズムを策定し、対応技術と能力を強化しながら将来的により効果的な対応体制を構築すべきである。

5. 中国は、日本の高市首相による「台湾有事発言」への対応において、「ハイブリッド脅威」の手法を採用した。国連において第二次世界大戦以降の国際秩序の再定義を試みただけでなく、沖縄の地位未定論を継続的に提起し、国際機関や法的な戦術を通じて国際世論に影響を与えようとしたのだ。この分野への理解を深め、中国の戦略と宣伝活動を調査・研究し、対策を講じる必要がある。

資料協力:台湾民主実験室(Doublethink Lab)提供のFIMI Intelligence Dashboard
日本語版監修:野嶋剛

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