2026年7月23日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年7月23日

3年前から始まっていたAI外交

 WAICOは本部を上海に置く政府間国際組織である。設立協定の署名式には国連のグテーレス事務総長が出席しており、名称もあいまって国連の下部組織のような印象を与えるが、実際には独立組織である。

 カザフスタン、ラオス、パキスタン、ロシア、インドネシアなど29カ国が創設メンバーとして名を連ねた。29カ国のリストは公式発表としては確認できていないが、中国メディアの報道を見ると、おおよそ図のとおりのようだ。

出所:中国政府発表(外交部・新華社)および複数の中国報道の突き合せを基にウェッジ作成( stockdevil /Heenal Jakharia /gettyimages) 写真を拡大

 グローバルサウスに対するAI支援は何も今回、突然始まった話ではない。23年10月の第3回一帯一路国際協力サミットフォーラムで「全球人工智能治理倡議(グローバルAIガバナンスイニシアチブ)」が発表されている。

 24年7月には国連総会で、中国は「AI能力建設国際協力決議」を提出し、140カ国以上の共同提案を得てコンセンサス(無投票の全会一致)で採択された。その後も「AI能力建設普恵計画」「『人工智能+』国際合作倡議」と続き、昨年のWAICで、李強首相はWAICOの設立を提唱している。

 ChatGPTのローンチが22年11月のこと。その約1年後にはAI外交が始まっていたわけだ。思いつきではなく、中国外交はAI支援を外交の中核に据えて育ててきた。

 WAICOの活動内容はまだ明確ではないが、習近平総書記の講演では、「今後5年間で発展途上国向けに人工知能専門研修枠5000人分を提供、ASEAN、アラブ連盟、アフリカ連合、ラテンアメリカ・カリブ共同体、上海協力機構、BRICS向けには国際人工知能応用協力センターを建設。気象AI早期警報システム『媽祖(マーズー)』の30カ国での導入、運用を推進」との内容が盛り込まれた。

発展途上国にとって魅力的な中国AI

 現在、世界の注目を集めるAIだが、リードしているのは米国だ。中国製AIは追い上げているとはいえ、現時点では米国を抜いてはいない。日本の一般的なユーザーにとっては優れた米国のAIを使えば十分で、中国製AIを選ぶ必要はないだろう。

 だが、グローバルサウスの国々にとっては、中国はきわめて魅力的な選択肢だ。その理由は「オープンウェイト」と「コスト」に集約される。

 中国AIの多くはオープンウェイトとして公開されている。オープンウェイトとはソースコードや学習データは非公開ながら、モデルそのもの(ウェイト、学習済みパラメータ)は公開する方式を意味する。ダウンロードして自分のサーバーで運用できる。ライセンス上、商用利用が認められているモデルも多い。


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