フランスでは、生態系に悪影響を与えないためとして原子力発電から排出される冷却水の水温の上限が決められている。熱波が水温を上昇させ発電所からの排水温度が規定以上に上昇するケースがあり、発電量を落とさざるを得なくなることがある。
フランスでは、2003年の熱波以降、ほぼ3年に1度の割合で河川の水温上昇により、発電量の制御が発生している。欧州、米国の熱波の影響による原発の発電量の減少を調査した研究によると、過去20年間に熱波の影響により原発の発電量は0.6%減少した。
熱波の影響は、原発だけに留まらない。
熱波は多くの発電設備に影響する
冷却水を利用しないガスタービンの発電設備も熱波の影響を受ける。気温が上がると空気は膨張し密度が低くなる。ガスは空気と混合し燃焼するので空気密度が下がると燃焼するガスの量も発電量も減る。
現在天然ガス火力の主体であるコンバインドサイクル発電が河川の冷却水に依存している場合には、河川水の水温上昇と空気密度低下の両方の影響を受ける。
20年8月中旬に熱波に襲われた米国カリフォルニア州では、太陽光発電設備が停止した日没後もエアコンの使用が続き、供給力が不足し停電に追い込まれた。
後の検証では、気温上昇による天然ガス火力の出力低下も供給力不足の一因であったことが判明した。停電発生時天然ガス火力が7割以上の電力を供給していた。
風力発電設備も熱波の影響を受ける。過去44年間の気温と風速の関係を研究した報告によると、欧州など世界の4分の3以上の地域で、高気温と低風速が関係している。
風力発電量は、風速の3乗に比例するので、低風速は発電量の大きな低下につながる。
気候変動問題に熱心な英国紙府は、気温上昇がエネルギー供給に与える影響を分析している。報告書は、太陽光パネルの効率は気温が25度を超え1度上昇するごとに、0.2%から0.5%低下するとしている。
熱波が続けばエアコンによる冷房需要は増えるが、原発から再生可能エネルギーまで主要な発電設備は全て負の影響を受ける。
日本の主要な発電設備は、欧州、米国と異なり臨海部に立地しているので、影響は比較的軽微だ。
日本では渇水の影響は軽微だが
日本の河川で水位の低下があっても、水力発電以外への影響はなく、欧州のような電力供給危機には直面しない。
欧州、米国では多くの原子力、火力発電所は内陸部の河川水あるいは湖水を冷却水として利用する場所に建てられている。国内にある炭鉱あるいは天然ガスパイプラインの近くで、かつ河川水、湖水も利用可能な場所だ。
日本の大型火力発電所、原発は臨海部に建設されている。海外から船舶により燃料を受け入れる必要があることに加え、海水を冷却水として取り入れるためだ。
固体の石炭は輸送費が高くなるので、炭鉱の近くで水が利用できる場所があれば燃料費を節約できる。日本でも、戦後復興期には炭鉱の近くの河川を利用する発電所が建設された。
多くの炭鉱があった北海道空知地方には、石狩川の河川水を利用する北海道電力の砂川石炭火力発電所が残っているが、来年3月に閉鎖予定だ。
海水を利用する日本の原発、火力が冷却水の問題に直面することはないが、今後の気温上昇が、発電設備に負の影響を与える一方、電力需要を引き上げる点は心配だ。
柏崎刈羽6号機の再稼働により、停電危機に直面していた首都圏の電力供給は一息ついているが、今後のデータセンターの電力需要増を考えると発電設備の増強は待ったなしの状況だ。
電力市場を自由化した日本では、将来の電気料金と投資収益が不透明になり、大型の発電所への投資は停滞している。
政府は、設備増強を目的に新制度の導入を続けているが、パッチワークにしか見えない。芯の通った政策が設備の増強・余裕と多様化を実現しなければ、欧州の電力危機は他人事ではなくなる。
