「ゆるいつながり」がビジネスを動かす
界隈経済圏 「平成女児」「風呂キャンセル」から「伊能忠敬」「皇居ラン」まで 牧口松二 (著) 日経BP 日本経済新聞出版 ¥1,100 税込
最後に紹介するのは、現代の新しいつながりと消費の形を描いた『界隈経済圏』(牧口松二 著、日経プレミアシリーズ)である。近年「〇〇キャンセル界隈」といった表現を聞く機会が増えたが、そこにビジネスチャンスが生まれている動きを本書は解説する。
もともと「界隈」とは、特定の地域やその周辺を指す言葉であるが、最近では、SNS上などで共通の趣味や価値観を持つ人々がゆるやかにつながる状態を指す意味合いで使われている。
こうした「〇〇界隈」と呼ばれる自由な関係性が、「経済圏」を形成する動きに結びつく様子を本書はこう示す。
界隈の内側で起きていることをよく観察してみると、立派な経済の流れが見えてきます。
「ちょっとした共通体験」→「内輪ノリとしての盛り上がり」→「外部へのじわじわ拡散」→「気づけば市場が動いている」
「ちょっとした共通体験」→「内輪ノリとしての盛り上がり」→「外部へのじわじわ拡散」→「気づけば市場が動いている」
同好の士が集まれば盛り上がりが生まれ、それが広がることで新たな消費やビジネスチャンスが創出されていくのは自然な流れと言える。こうした界隈におけるつながりがどのようにヒット商品を生み出してきたのか、本書はキリンビバレッジの「午後の紅茶」など具体的な事例を挙げながら丁寧に分析している。
「界隈」は、気軽に集まり、また静かに出ていくことができる自由度の高い世界である。人々の価値観が多様化する現代において、こうした「界隈」を起点として生まれた経済のモメンタムが大きな潮流に成長していく事例が今後増えれば、日本経済を支える存在になっていくのかもしれない。
忙しい日常から少し距離をおける夏休みの時期には、誰もが自分にとって心地よい「地域」や「場所」「界隈」を自然と見つけ出しているのかもしれない。こうした世界を意識することで、これからの自分や社会への向き合い方を考えてみるのも面白い。
